平成の沖縄振興計画は、日本復帰当初の「本土との格差是正」を目標に、道路や空港、港湾をはじめとする社会資本整備から、「民間主導の自立型経済の構築」に軸足を移してきた。沖縄振興によって社会資本整備が着実に進む一方、県の自主財源比率は全国平均の約3分の2程度と、まだ低く、国庫支出金や地方交付税に大きく依存した脆弱(ぜいじゃく)な構造となっている。自立経済への道のりは道半ばだ。
本土との格差
沖縄は、沖縄戦と戦後27年間の米国統治下で、長期的な産業政策の欠如と民有地の強制接収などによる米軍基地建設により、社会資本整備や産業振興で本土との大きな格差が生じた。格差解消を国の責任で目指したのが1972年からの「沖縄振興開発計画」だ。国は公共工事に投資し、県や市町村に10分の9を補助する高率補助を提供した。2002年からは「沖縄振興計画」となり、自立的発展が目標に掲げられたが、条件整備は遅れていた。
このため県は沖縄振興の新たな枠組みを当時の民主党政権に要求した。09年に誕生した民主党の鳩山政権は、地域主権改革を「改革一丁目一番地」と唱え、国庫補助負担金の一括交付金化などを沖縄で率先して行おうとした。これらを背景に県が求めていた沖縄振興特別措置法の抜本的改正が実現した。
一括交付金
12年施行の同改正法では、沖縄の優位性を生かした観光や情報などの税制、自由度の高い沖縄振興一括交付金が創設された。沖縄振興計画の策定主体は国ではなく県となった。同年5月15日、県は沖縄振興計画「沖縄21世紀ビジョン基本計画」を策定。「沖縄らしい自然と歴史、伝統、文化を大切にする島」など県民の意見を反映させ、将来の沖縄の姿を施策に落とし込んだ。
これらの施策で県経済は着実に成長し、県内総生産と1人当たり県民所得は増加した。雇用情勢も改善し、完全失業率の昨年の平均は3・4%と復帰以降、過去最低値を更新した。観光客増加も顕著で県の景気は好調に推移している。
ただ、一括交付金は自民党政権下で減額が続いている。19年度の沖縄関係予算は国直轄事業の割合が増え、一括交付金は95億円の減額になった。
琉球大の島袋純教授は、沖縄振興と米軍基地の維持強化が関連付けられていると問題視する。これまでの社会資本整備による建設業拡大の負の側面について「非正規低賃金の劣悪な雇用や労働環境悪化の常態化を生んできた」と指摘。「沖縄振興特別措置に組み込まれなかった教育・福祉・医療などの分野は大きく取り残されている」と強調する。
現在の特別措置法は21年度に期限切れとなる。県は新たな沖縄振興計画の策定に向け、施策の「総点検」を進める。課題を洗い出した上で、21世紀ビジョンの実現と成長著しいアジアと連動した沖縄の発展や経済成長を描く新たな計画づくりに着手する。併せて基地負担の軽減や玉城デニー知事が掲げる「誰一人取り残さない」社会をどう実現していくのか、計画を練る大切な時期となる。 (中村万里子)