〈5〉薬剤使用過多による頭痛 薬の休止と予防で治療


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 片頭痛や緊張型頭痛に慢性的に悩まされる人は多数います。これらは一次性頭痛と呼ばれ、脳出血や脳腫瘍など、はっきりとした頭痛の原因がありません。

 このような人が、鎮痛剤や片頭痛治療薬のトリプタン製剤などを頻回に服用すると、元の一次性頭痛が悪化したり、薬剤が原因で新たな頭痛が生じたりする場合があります。これを「薬剤の使用過多による頭痛」と言います。

 英語ではmedication overuse headache(MOH)で、以前は「薬物乱用頭痛」と訳されていましたが、違法薬物による頭痛との混同を避けるため、このように改められました。

 MOHは、頭痛発作への恐怖、不安、薬物への依存傾向などの心理的要因だけでなく、遺伝的要因やその他の原因も想定されていますが、そのメカニズムはいまだ完全に解明されてはいません。40~50代の女性、片頭痛患者に多いと言われ、原因薬剤には、アセトアミノフェンやアスピリンなどの市販鎮痛薬、病院で処方される非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やトリプタン製剤などがあります。

 市販薬やNSAIDsでは月に15日以上、トリプタン製剤では月に10日以上、3カ月以上にわたって使用する状態を使用過多と見なします。元々の頭痛とは痛みを感じる場所や強さが違ってくる場合もあれば、同じ性状でも頻度が多くなる場合もあります。

 治療は、原因となった頭痛治療薬の休止と頭痛予防が重要です。頭痛治療薬の休止には、即座にやめる方法と少しずつ減らしていく方法がありますが、元々頭痛持ちの人ですから、頭痛発作時には他の頭痛治療薬の使用が必要になることもあります。

 頭痛予防には頭痛予防薬の内服のほか、禁煙、節酒、適度な運動習慣、長時間の同じ姿勢を避ける―といった生活習慣の見直しや改善があります。MOHは原因薬剤を中止することで症状が改善することが多いものの、再発率も高く、根気よく治療を続けることが大切です。
 (久田均、脳外科クリニックくだ 脳神経外科)