[日曜の風]こどもの日 子の虐待ない時代を


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 10連休も終わりに近づきましたね。私の周りで、文字通りの10連休だったのは子どもたちだけでした。大人たちが少しうんざりしているのとは対照に、子どもたちはとてもうれしい様子です。けれど、お休みがうれしいお子さんばかりではないでしょう。

 民法には、親が子をこらしめ制裁を加えることを意味する「懲戒権」が認められています。なかなか条文をご覧になることもないと思いますので、以下、掲載します。

 第820条 親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。

 第822条 親権を行う者は、第820条の規定による監護及び教育に必要な範囲内でその子を懲戒することができる。

 この条文は、2011年に改正されたもので、その目的は子どもの虐待を防止することでしたので、「子の利益のために」という言葉が入れられました。けれど、子どもを暴力から守るという目的からすれば、子の利益のためであれば暴力の使用を認めることにもなったのです。

 そもそも日本の民法は1898年の明治時代にできたもので、その当時はいまのように子どもに対する暴力が、成長にどう影響するかなんて考えられていない時代でした。

 日本も入っている国連の子どもの権利委員会は、「体罰を撤廃することは、社会のあらゆる形態の暴力を減少させ、かつ防止するための鍵となる戦略である」と述べています。

 「おねがい、ゆるして」と覚えたての文字で助けを求めた船戸結愛ちゃん(5)。父からの暴力を先生に必死に訴えていた栗原心愛さん(10)。二人とも「しつけ」と称した親の体罰によって命を奪われました。虐待事件が後を絶たないことから、「親の体罰禁止」を盛り込んだ児童虐待防止法と児童福祉法の改正案が政府から提出され、国会で審議入りする見通しです。

 新しい時代に入って初めてのこどもの日。子どもは親の所有物ではなく、懲戒権の対象にならず、たたかれたり、殴られたり、虐待されたりすることのない時代となることを望みます。

(谷口真由美、法学者・全日本おばちゃん党代表代行)