北京やマニラ、東京など国内外の主要都市が4時間圏内にあり、そのエリアが抱える人口は約20億人。東アジアの中心に位置する沖縄の地理的優位性を生かし、那覇空港が国際物流拠点として活用されている。2009年に全日本空輸(ANA)の物流ハブ事業が始まって以降は国際貨物の取り扱い実績が大幅に増加した。一方で近年は競争の激化による伸び率の鈍化も見られる。
東京から夜間に出された荷物が未明に沖縄に到着し、輸出に向けた手続きを済ませて翌日午前にはアジアの主要都市に届く。24時間の運用が可能な那覇空港を経由することで、高速の貨物輸送が可能となっている。
ANAのハブ事業開始前の08年に1894トンだった国際貨物の取扱量は、2017年は約19万7千トンと100倍近くまで伸びた。県産品や全国の特産品を輸出する費用を県が補助する制度もあり、県アジア経済戦略課の担当者は「観光や情報通信に次ぐ産業として物流事業を確立させたい」と目標を掲げる。
那覇空港でハブ事業を手がけるANAカーゴ沖縄統括支店の渡辺英俊支店長は「物流は夜に動くことが多い。24時間利用できることは那覇空港を拠点にする理由の一つだ」と利便性の高さを評価する。現在は羽田や関西など国内4空港と、上海やバンコクなど海外6空港を結ぶ拠点として沖縄を位置付ける。貨物の多くを占めるのは農産物だ。航空機整備施設を運営するMROJapanが那覇空港で事業を開始したため、航空機部品などの取り扱いが増えることも期待できる。
ANAのハブ事業開始直後は取り扱い貨物の量が大きく伸びたが、14年以降は17~19万トンで推移しており、伸び悩みを指摘する意見もある。ANAの持ち株会社ANAホールディングスの片野坂真哉社長は、那覇空港の貨物事業について「10年、続けても黒字化していない。企業として厳しい」との認識を示した。沖縄から輸出する貨物の扱いを増やすことで、収益改善につなげることを視野に入れている。
旅客機の貨物スペースを活用して、沖縄を経由せず直接、海外に輸出されるケースもあるという。県の担当者は「旅客機との競争が出ている。貨物機ならではの特色をもっとPRする必要がある」と語る。
県内の物流事業者は「現在は県の輸送費補助があるから沖縄を経由するメリットがあるが、補助がなくなったらどうなるか分からない。補助がなくても勝負できる強さを持たないといけない」と警鐘を鳴らす。
アジア各国と日本を結ぶ物流拠点として、沖縄が高い可能性を秘めていることに変わりはない。県は企業誘致や取り扱い貨物の増加に向けた取り組みを強化し、那覇空港の持つポテンシャルを最大限に引き出すことを目指す。沖縄がアジアを代表する航空物流の拠点に成長できるか、今後の動向が注目される。
(「熱島・沖縄経済」取材班・平安太一)
(琉球新報 2019年3月12日掲載)