島しょ県・沖縄は海の玄関口の整備も進んでいる。急増するクルーズ船の受け入れ施設が不足する中、民間資金を活用した「官民連携による国際クルーズ拠点」の形成が国を挙げて進んでおり、県内でも那覇、本部、平良の3港が選定された。中でも那覇空港に近い那覇港は、空路で訪れてクルーズ旅行を楽しむ「フライ&クルーズ」の推進などが計画されており、大きな経済効果を生む高付加価値の観光形態として期待を集めている。
那覇港が国の官民連携による国際クルーズ拠点の形成港湾に追加選定されたのは今月1日。那覇港管理組合(管理者・玉城デニー知事)と海外大手船社のMSCクルーズ(スイス)、ロイヤル・カリビアン・クルーズ(米国)の2社が連携し、那覇港新港地区に大型クルーズ船が寄港できる専用岸壁と旅客ターミナルビルを整備する計画だ。
この制度では、岸壁は国が整備、ターミナル施設を船社が資金を出して建設する。港湾管理者の負担は軽減し、民間資金活用で迅速整備も期待できる。船社は岸壁の長期優先使用が可能だ。指定には国に港湾管理者と船社が連名で応募する形となる。
那覇港管理組合は県が進める「東洋のカリブ構想」の実現に向け、那覇港発着のフライ&クルーズの推進などを基準に連携船社を公募。昨年12月、実績なども考慮しMSCとロイヤル・カリビアンの2社1組を選んだ。那覇港管理組合クルーズ推進課の浦崎宮人課長は「目指す方向性は合致している」と説明。南西諸島周遊クルーズの提供など、寄港回数増加が見込めることが確認できたという。
今後は2022年の運用開始に向け、国が22万トン級が寄港できる岸壁を整備、2社が旅客ターミナルビルを建設する。2社は30年間、年間最大250回優先的に利用できる。
発着港となるにはターミナルに手荷物受付やチェックインカウンターなど空港と同じような付加機能が必要になるが、これにより大きな経済効果が期待できる。通常、クルーズ旅行は寄港地での宿泊はない。だが、発着港となれば前後に少なくとも1泊ずつ宿泊し、観光消費額が増えると見込まれる。
現在、沖縄を訪れた外国人空路客の平均消費額は9万5千円ほどだが、海路客は3万円弱。沖縄を訪れるクルーズ船は宿泊を伴わず、消費額は低い。これが発着港となれば前後の宿泊や飲食の消費などが出てくる。大型クルーズ船の寄港1回で1億円超の観光消費額があるといわれるが、発着港になると少なくとも2~3倍になると見込まれる。船内への物資搬入などもあり、波及効果はさらに大きくなる可能性がある。
そこで、県も沖縄からのフライ&クルーズを増やそうと19年度予算で、沖縄発着のクルーズ船の船社、旅行会社を対象に空路と同様に金銭的な支援策を検討している。県観光振興課の糸数勝課長は「滞在時間が長くなれば沖縄をより深く知ってもらえ、印象が良くなる。投資を呼び込むことにもつながる」と意義を語った。計画の進展は東洋のカリブ構想実現への一歩となりそうだ。
(「熱島・沖縄経済」取材班・仲村良太)
(琉球新報 2019年3月20日掲載)