県内へのクルーズ船寄港が増加する中、物流港としての役割が強い中城湾港でも寄港が増加している。ただ寄港の予約は多いものの、那覇港の代替地として予備で予約される「ダブルブッキング」も多く、キャンセルも多い。そのため、誘致を進める中部市町村圏事務組合は魅力ある観光メニューを提供し、中城の認知度向上に力を入れている。
中城湾港の岸壁予約ルールでは、原則的にクルーズ船の受け入れは週に1回で、年間だと約50回が上限となっている。2018年度は予約段階では40回だった。予約率にすると8割で、365日毎日寄港できる港であれば292回で、高水準と言える。
だが実際の寄港実績は20回で、予約の半分がキャンセルされた。台風接近という不可抗力もあるが、多くは那覇港の予約が確定したためのキャンセルと見られている。
背景には中城湾港はターミナル施設もなく、外国人観光客の中で知名度も低く「那覇の予約が取れなくて、中城に入れていることが多い。空きができたら那覇に移ることがほとんどだ」(クルーズ代理店関係者)という状況だという。実際、中城湾港に寄港した場合でも、首里城や国際通りの買い物などのツアーが設定されることも多い。
そこで中部5市町村や関係団体などでつくる「中城湾港クルーズ促進連絡協議会」は周辺地域の魅力を発信し、クルーズ客受け入れに力を入れている。港には同協議会を構成する沖縄市、うるま市、北谷町、北中城村、中城村の観光スポットを紹介する案内板があり、世界文化遺産に登録されている勝連城跡と中城城跡、東南植物楽園、沖縄こどもの国などが掲載されている。
そこには県民に人気で、うるま市の無形文化財にも登録された闘牛も紹介されている。18年12月5日に郵船クルーズの「飛鳥Ⅱ」が寄港した際には、闘牛実況アナウンサーの伊波大志さんが解説するツアーも組まれ、キャンセル待ちも出るほどの人気で、多くの乗客が中部観光を楽しんだ。
同協議会事務局の中部広域市町村圏事務組合の座喜味保事務局長は「闘牛ツアーは成功事例だ。エイサーは取り込めるだろう。中部の魅力を打ち出して中城に呼び込みたい」と語る。限られた日数の中、魅力的な観光メニューで代替地を脱却できるか、観光地としての真価も問われそうだ。
(「熱島・沖縄経済」取材班・仲村良太)
(琉球新報 2019年3月21日掲載)