菅義偉官房長官がシャナハン米国防長官代行と会談し、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を着実に実施するというこれまでの日米間の方針を再確認した。官房長官による異例の訪米で拉致問題など北朝鮮情勢の行方が注目されるが、沖縄の基地問題に関しては一連の選挙や県民投票で示された辺野古新基地建設反対の民意が顧みられることはなかった。安倍政権が強調する「沖縄に寄り添う」姿勢よりも、米側に忠誠を尽くすありようが鮮明に浮かび上がる。
政権の危機管理を担う官房長官の外国訪問は異例だ。これまでの菅氏の海外出張は2015年10月に在沖米海兵隊の移転状況を視察するため訪れたグアムのみで、今回が2度目。シャナハン氏との会談後、菅氏は兼任する沖縄基地負担軽減担当相として「辺野古移設を含め米軍再編や負担軽減策を着実に実施することを確認した」と強調した。
辺野古移設を巡っては、4月に開かれた日米安全保障協議委員会(2プラス2)で日米の外務、防衛両閣僚が「唯一の解決策」だと確認した。安倍晋三首相は4月に続き5月、6月と3カ月連続でトランプ大統領との会談を予定しており、日米のトップ同士でも改めて辺野古移設推進を打ち出すとみられる。
日本側にとっては北朝鮮情勢の対応で米側の協力が不可欠となるほか、貿易問題や米側が暗に増額を要求する「思いやり予算」(在日米軍駐留経費負担)などでも懸念材料を抱える。こうした事情も踏まえ、政府関係者は辺野古移設計画について「ちゃぶ台をひっくり返すようなことはできない」と語る。
一方、選挙で示された民意を日米両政府が強硬方針で“上塗り”していく対応について県関係者は「(沖縄の民意を)へとも思っていない。官房長官自ら訪米することで緻密な連携を望む姿勢を見せたかったのだろう。沖縄に寄り添うとはもう言えないはずだ」と批判した。
県幹部の一人は、大浦湾に広がる軟弱地盤の対応などで「工費や工期も国民や県民に説明せず、米国に推進すると言うのはいかがなものか」と疑問を呈した。主要な選挙や県民投票で「新基地建設に反対という民意は示されている。県としては日米両政府や全国民にそのことを伝えていく姿勢は変わらない」と語った。
(明真南斗、當山幸都)