拡大するクルーズ市場をつかもうと、国を挙げた制度「官民連携による国際クルーズ拠点」に指定された本部港は、2020年度の供用開始に向けて20万トン級の大型クルーズ船を受け入れられる既設岸壁の改良工事が進んでいる。一方、旅客ターミナル施設の供用開始は遅れる見込みとなっているが、これにより思わぬ経済効果を生み出しそうだ。
本部港が官民連携による国際クルーズ拠点に選定されたのは17年1月。国の募集に、港湾管理者の県とクルーズ船社のゲンティン香港が連携して応募した。
旅客ターミナル施設の遅れは、投資するゲンティン香港がCIQ(税関・出入国管理・検疫)機能付加を整備の前提としていることが背景にある。国はCIQ設置にはクルーズ船寄港が年100回以上必要だとしており、ゲンティン香港の20年の寄港目標は88回で目標には届いていなかった。
ただ、CIQがなければ国外から直接本部港に上陸することができないため、県関係者からも「ゲンティンが求めるのは当たり前だ」との声があり、県は本部港へのクルーズ船誘致を進めた。結果、寄港数を年100回以上に上方修正して3月中に国に資料提出した。ターミナル施設整備は遅れる予想だが、県は仮設のCIQ設置を検討しており、岸壁は予定通り20年に供用開始できるよう準備を進めている。
県が18年1月に作成した本部港の国際旅客船拠点形成計画の目標では、20年の寄港回数は88回で旅客数は15万人に設定していた。この旅客数に、17年度の外国人海路客1人当たり観光消費額2万9861円をかけると、単純計算で消費効果は約45億円となる。同計画の目標では30年に104回、22万人、消費効果は約66億円と試算できる。100回以上の寄港が早く実現すれば消費効果は約1・5倍。結果的に「プラスαだ」(県関係者)とみられている。
大きな経済効果が期待される中、やんばる地域に数千人規模の観光客が一気に押し寄せることで自然環境や生活環境への大きな負荷が懸念されるほか、インフラ、受け入れ態勢整備など課題は多い。県内でクルーズ船の寄港地旅行を多く手がけるJTB沖縄の杉本健次社長も「本部町は巡回バスの運行による渋滞対策など早急に着手すべきだ」と指摘している。
クルーズ船の寄港、旅客とも目標達成が早まる可能性がある中、観光客の満足度向上、地元住民の理解促進のためにも、スピード感のある対策も急務だ。
(「熱島・沖縄経済」取材班・仲村良太)
(琉球新報 2019年3月27日掲載)