四方を海に囲まれ、海上物流が高いウエートを占める沖縄で、新たな物流拠点となる那覇港総合物流センターが5月に稼働する。国内外の貨物を集約・保管するほか、検品や梱(こん)包(ぽう)を施して付加価値を高める役割も果たす。沖縄から国内外に出荷する貨物の増加も見込まれ、長年の課題である「片荷輸送」の解消につながるとの期待も高い。関係者は「沖縄の物流が大きく変わる」と強調する。
沖縄を訪れる観光客数の増加や、ホテルやマンションの建設ラッシュに伴って、那覇港で取り扱う貨物量は増加傾向にある。2012年以降は右肩上がりに増え、17年は過去最高の1216万トンを記録した。
一方で輸出量は30万トン台で推移しており、大きな伸びを見せていない。沖縄から出すコンテナの多くが空となっており、片荷輸送の状態が続く。那覇港管理組合の前村治氏は「片荷輸送が改善されないと沖縄の海上物流コストは高いままだ。沖縄から出す貨物を増やす必要がある」と指摘する。
那覇港総合物流センターは冷凍や冷蔵、ドライなど複数の温度帯に対応しており、黒糖や生鮮食品などを保管できる。沖縄の食材を一定量ストックして、ニーズに応じて国内外へ出荷することが可能になる。センターに集約した製品の梱包などを行い、付加価値の高い貨物として出荷することも目指す。前村氏は「沖縄発の貨物が増加して物流コストの削減につながり、県民や県経済にとってプラスになる」と期待した。
新施設の完成で、海上輸送で大量の貨物を集め、航空便に引き継いで目的地へ運ぶ「シー・アンド・エアー」の促進も見込まれる。物流に詳しい琉球大の知念肇教授は、船で運び入れた食料品を沖縄で一時保管し、受注に応じて航空便で輸送する「ストック型物流」のニーズが高まると考えている。那覇は港湾と空港の距離が近く「海と空の両方を活用できる、国内では数少ない有望地域だ」と指摘する。
那覇港総合物流センター統括管理責任者の源河政則氏は「沖縄を拠点にさまざまな貨物を国内外に輸送できる。センターがあることで沖縄が東南アジアのハブになる」と見ている。センターを県内物流の中心に位置付けることで、荷主同士のやりとりがスムーズになり、物流の効率化にもつながるという。将来的には近接エリアに新たな施設が整備される予定もある。「センターが物流の中核になることは間違いない」と源河氏は語る。沖縄が国内外を結ぶ海上物流の要になり、万国津梁の地として発展するためにも、今後のセンターの活用が重要になる。
(「熱島・沖縄経済」取材班・平安太一)
(琉球新報 2019年3月28日掲載)