沖縄発の小口貨物を世界70地域、130以上の都市へ輸出する物流網が、県内外3社の協力で構築された。貨物の海上混載輸送などを手掛ける信永海運(東京都)は、物流事業のオゥ・ティ・ケイ(那覇市)と沖縄ヤマト運輸(糸満市)と一緒に、海上貨物混載サービスを2月から開始した。3社は「県産の商品をどんどん世界に出して、沖縄の海上物流を活性化させたい」と意気込む。
同サービスでは小口の貨物を集積して那覇港から台湾や香港に海上輸送を実施するほか、香港経由で欧州やアフリカ、北米など世界各地へ貨物を運べるようにした。台湾は1日、香港なら2日で到着可能で、リードタイムの短さを前面に押し出す。信永海運は国内の主要港で混載貨物を取り扱うなど実績があり、アジアに近い沖縄を新たな拠点として位置付ける。東京や大阪など都市部の港が混雑し、貨物船の寄港地が地方へシフトしていることもあり、那覇港の活用を決めた。
信永海運の長島啓浩社長は「沖縄はアジア各国から親しまれている地域で、物流の中心としての機能も果たせる場所だ。県産品の輸出だけではなく、輸入事業でも那覇港を活用できる」と強調する。
取り扱うのは食料品や飲料、雑貨などの小口貨物が中心となる。これまで小口貨物は航空便で海外に輸出することが主流だったが、海上輸送の選択肢を新たに提供する。海上輸送を活用した場合、輸送費は航空便の4~5割程度まで抑えられるという。オゥ・ティ・ケイの米澤敬司氏は「海上輸送といえばコンテナを満杯にするだけの貨物を出さないといけないというイメージが強いが、小口貨物でも輸出できることを周知したい」と語る。
2月の開始から約1カ月で取り扱い貨物量は1トン未満で、輸出量を増やすことが今後のテーマとなっている。沖縄は製造業が少ないことから「短期間で貨物を増加させることは困難だ」(長島社長)との見方は強い。一方で海外展開を考える中小事業者を中心に、小口貨物輸出のニーズは多いと見ている。沖縄ヤマト運輸では引っ越し貨物の受け入れなど、新たな事業展開も視野に入れている。
米澤氏は「小口貨物の海上輸送サービスは沖縄にマッチした事業だと考えている。沖縄の産業や経済の発展に貢献できると確信している」と自信をのぞかせる。沖縄と世界へつなぐ物流網の活用で、県内企業の発展につながるか、今後の展開に期待がかかる。
(「熱島・沖縄経済」取材班・平安太一)
(琉球新報 2019年4月4日掲載)