製造企業が多く立地する、うるま市の国際物流拠点産業集積地域。同地域に隣接する中城湾港新港地区を、国際的な海上物拠点化として活用する取り組みが進められている。うるま市は外航貨物船を同地区に寄港させる実証実験を1月に実施し、将来的な定期航路の開設に向けて可能性を探った。那覇港に集中している貨物を同地区で受け入れることで、全県的な物流の効率化にもつなげようと狙う。
新港地区の東ふ頭に接岸した外航貨物船がコンテナを運び入れ、保税運送や通関など輸入のための手続きを経て、荷主の手元に配送する。1月の実証実験では貨物の到着から荷主への引き渡しまでの流れを確認した。貨物船の接岸から荷物の到着までに要したのは数時間程度だった。
国内外の貨物船は那覇港に接岸することがほとんどで、新港地区の近隣に立地する企業は那覇市まで貨物を取りに行っている。貨物が集中する那覇港は受け取るまでに、数時間待たされることがあるという。うるま市との間の移動を考えると所要時間はさらに長くなり、物流費などコストも増える。
うるま市産業政策課の伊波和輝さんは「新港地区の活用で、荷物到着までのリードタイムを大幅に短縮できた」と実験の手応えを口にする。
国際物流拠点産業集積地域は海外展開を見据える企業も多く、外航貨物船の定期的な寄港を求める要望が多い。伊波さんは「物流面の受け入れ環境が充実していなかったが、実験で今後の可能性を示すことができた」と感じている。うるま市は実験結果を検証して、定期航路の就航に向けた検討を進める。
実験に参加したタイガー産業(うるま市)は「荷物が数時間で到着するのは画期的だった」と振り返る。同社は中国に工場があるほか、建築資材を台湾から輸入する。現在は那覇港を利用しているが、人手不足でトラック運転手の確保が困難な時期もあり、輸入した荷物が手元に届くまで1週間を要することもあるという。
新港地区の活用で所要時間を大幅に短縮できるため、同社貿易課の根間勝彦課長は「近くにある港を活用できればコストを抑えられる。企業の発展にもつながる」と強調する。
外航貨物船の受け入れにはフェンスや防犯カメラなど保安施設の設置が必要で、食品を取り扱うためには植物防疫施設などの整備が必要になる。外航貨物の定期化に向けて取り扱い貨物を増やすことも課題の一つだ。
根間課長は「那覇港ぐらいの物量は必要だ。貨物量を増やすために企業同士の協力も必要になる」と指摘する。新港地区を中部の物流拠点として発展させるため、課題解決など今後もさまざまな取り組みが進められる。
(「熱島・沖縄経済」取材班・平安太一)
(琉球新報 2019年4月9日掲載)