那覇高3年の玉城弘次廊(たまき・こうじろう)さん(17)=那覇市=がゴールデンウイーク中に訪れていた埼玉県越谷市で発生した火災で、燃え上がる住宅から逃げ遅れた少女(16)を助け出した。住宅は半焼したが玉城さん、少女を含めてけが人はいなかった。少女の命を救った玉城さんは「たまたま自分がいただけ。他の人でも行っていたと思う」と語る。
火災が起きたのは4月30日午前11時22分ごろ。玉城さんは、連休で越谷市内の両親の友人宅に滞在していたところ、男の子の声で「火事です」と聞こえた先を見ると隣の民家で火災が発生していた。住民の女性は「娘が残っている」とパニック状態で、取り乱していた。2階の部屋には助けを求める少女がいた。
次の瞬間、玉城さんの体は勝手に動いていた。雨どいをよじ登ると煙が立ちこめており、少女も恐怖でおびえていた。玉城さんは「もう大丈夫だよ」と声をかけ落ち着かせると、片手で窓枠をつかむと少女を抱えて2階の窓から地上に広げられた毛布に下ろし、自身も飛び降りた。
その場にいた玉城さんの母は「生きてて良かった」と目を潤ませていた。
越谷市消防本部によると、住宅は2階部分で火災が発生、階段には煙が充満しており、逃げるのは困難だったという。
2年まで野球部で今は「たまに腕立て伏せするだけ」という玉城さん。少女を助けたことが校内で知られると「ヒーロー」「ファイヤーファイター」だともてはやされた。助けた少女や家族からは涙ながらに「ありがとう」と感謝された。これから卒業後の進路を決めるが「人を救う仕事もいいな」と思い始めている。
玉城さんには越谷市長から感謝状が贈られる。【琉球新報電子版】