【記者解説】日本遺産って何? 五輪開催にらんだ新制度 観光振興の発信力向上に


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永岡桂子文部科学副大臣(左)から日本遺産の認定証を受け取る玉城デニー知事=20日、東京国立博物館

 琉球料理と泡盛、芸能が、関連する29の史跡や生活文化を含めた枠組みで「日本遺産」に選ばれた。沖縄独自の歴史や文化の価値が新たな公的認証を受けた形で、歴史文化の継承発展や観光振興の面で発信力を高める一助となる。県内では琉球料理と琉球泡盛のユネスコ無形文化遺産登録を目指す動きもあり、関係者は今回の認定をユネスコ登録に向けた弾みにしたいと歓迎している。

 日本遺産は2020年の東京五輪・パラリンピック開催をにらみ、増加する訪日外国人観光客の訪問地にすることを目的に、文化庁が戦略的に認定を進めている。20年度までに計100件程度を認定する考えだが、制度自体が15年度に始まった新しい取り組みで、認知が広がっていないという課題もある。

 日本遺産が従来の国指定重要文化財や史跡・名勝などと異なるのは、個々の文化財を単独で認定するのではなく、一つの物語でつないだ文化財群として“面”で認定する点だ。

 県は今回「琉球王国時代から連綿と続く沖縄の伝統的な『琉球料理』と『泡盛』、そして『芸能』」の題で申請した。那覇市と浦添市の琉球王国時代の遺跡や、時代に沿って発展してきた琉球料理と泡盛、芸能が、その歴史を含めて包括的に認定されている。

 認定によって情報発信や人材育成、普及啓発、調査研究など多分野で国の補助事業を実施できる利点がある。県は今後、関連団体と連携し「日本遺産活用推進協議会(仮称)」を早期に設置し、どのような事業に取り組むかを検討する考えだ。

 与えられた新たな価値を実益につなげるため、関係者がいかに知恵を絞るかが求められる。
 (外間愛也)