『ココロ・カラダ 不思議つながり』 いのちや性 新たな世界


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
『ココロ・カラダ 不思議つながり』徳永桂子著 琉球新報社・1350円

 世に溢(あふ)れる歪(ゆが)んだ商業主義的性情報は、SNSの拡(ひろ)がりによってますます容易に、暴力的に子どもたちの世界を侵食している。本書は、こうした現状への大人の責任、教育的対抗措置として企画された本紙小中学生新聞「りゅうPON!」の2年間の連載のうち1年半をまとめて加筆し誕生した。

 著者は、長年子どもたちの育ちに寄り添い、励まし続けてきた思春期問題の専門家である。本書は、著者が実際に子どもたちから受け取った55の質問をもとに、1.こころ・からだ不思議つながり、2.思春期のからだ、3.性の多様性&恋愛、という3つの章に分けて展開される。現在、世界ではユネスコ『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』に示されるように、性自体を幅広い視点から捉えて展開する「包括的性教育」がスタンダードになりつつあるが、本書の内容構成も正(まさ)にその視点を指向している。

 個々の切り口も、実に面白い。各項、初めに質問を提示し、すぐに短い答えを返す。たとえば、「パンツにつく黄色い液体は?」には「涙と同じ、身体を守る」。「生理ってなに?」には、「子宮がおとなになる練習」という具合だ。思わずハッとさせられた読者は、それに続いてわかりやすい語り口の解説を読むことになる。基本は、見開き2ページの一話完結型。どこからでも読み始められる。すべての漢字にふりがなが添えられ、各カットにも人権への細かな配慮がなされている。子どもの世界を熟知した著者の優れたセンスに、学ぶべきことも多い。

 「三つ子の魂百まで」ではないが、子どもたちが子ども時代に出合う性の情報は、その後の人生、生き方に大きな影響を及ぼすと言われている。いのちや性に興味をもち始めた子どもたちのテキストとしてはもちろん、子どもに関わるすべての大人の教育・子育ての参考書としても活用したい。もちろん、既に過激な情報に触れてしまった子どもたち、性のことはわかったつもりになっている大人にとっても、新たな世界を知り、生きる元気を手にできる一冊だ。

 (村末勇介・琉球大学准教授)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 とくなが・けいこ 思春期保健相談士。神戸大学大学院修了。性教育など「性・子ども・暴力防止」をキーワードに人権擁護活動をしている。著書に「からだノート~中学生の相談箱」(大月書店)など。

 

徳永桂子・著/上原明子・イラスト
A5変型判 128頁(オールカラー)

¥1,250(税抜き)