金武町の金武中川から金武浜田までの5・6キロ、田園風景の中を通り抜ける国道329号金武バイパスが3月30日に全線開通した。新たな道路の整備は渋滞緩和や交流人口の増加にとどまらず、地域の活性化につながることが期待される。同町では米軍ギンバル訓練場跡地の開発が進められており、バイパス開通で事業の推進も見込まれる。
金武町ではギンバル訓練場跡地に野球場やサッカー場が建設され、プロ野球の楽天やサッカーのヴィッセル神戸がキャンプに訪れるなど、スポーツが新たな観光コンテンツとなっている。これまではタコライスなど特産品が注目されたが、町関係者は「よほど目的がある人じゃないと足を運ぶことはなかった」と振り返る。スポーツキャンプの誘致で交流人口は一気に増加し、ヴィッセル神戸のキャンプには約4千人が訪れた。
金武町企画課の安富祖匠企画係長は「金武町がスポーツキャンプで注目され、町内に滞在する人が増えている」と変化を実感する。バイパス開通で住宅地や学校の周辺を通らずに野球場やサッカー場までアクセスできるようになり、町民が利用する道路の渋滞緩和にもつながったという。安富祖氏は「観光客と住民にとってプラスになった」と感じている。
ギンバル訓練場跡地は今後、ホテルや商業施設、温泉宿泊施設などの整備が計画されている。バイパスを活用することで沖縄自動車道からスムーズに同跡地へ移動でき、ホテル宿泊者などの利便性が向上する。施設整備のための工事車両も迅速に現場に移動できるようになり、事業の推進を後押しすると見られている。安富祖氏は「ギンバルの周辺は生まれ変わる。バイパスの開通がこれからの金武町の発展に寄与するはずだ」と強調した。
宿泊や自然体験ができる同町のネイチャーみらい館も、バイパス開通の効果を注視している。同施設の仲間研二事務局長は「(バイパス開通で)県内外の人がネイチャーみらい館やギンバル跡地に足を運ぶきっかけができる」と語る。バイパス沿いの案内板設置など、さらなる利便性の向上を目指して今後は関係機関と意見交換を進めるという。
仲間氏は「バイパスの開通が金武町の観光振興につながってほしい」と願う。ギンバル跡地の開発で大きく発展する金武町に、バイパス開通がどのような役割を果たすか注目される。
(「熱島・沖縄経済」取材班・平安太一)
(琉球新報 2019年5月8日掲載)