国道58号沿いの那覇市久茂地にある約600平方メートルの空き地。2020年のホテル開業が予定されているこの土地は、坪500万円を優に超える高値で取引されたという。那覇市の市街地を中心に急上昇を続ける商業地地価は時に「バブル」と表現されるが、企画した不動産会社の幹部は「バブルではない。むしろ採算性をがっちりと固めた上で逆算している」と、実需に伴う取引だと断言する。
県内の地価は14年以降上昇を続けている。19年1月の調査では、商業地で対前年比10・3%、住宅地も同8・5%と全国でも最も伸び率が大きかった。しかしながら、地価が急上昇したバブル期とは明確な違いがある。
バブル期には那覇市内の58号沿いで坪1500万円以上という、到底採算性の引き合わないような高値がついていた。異常な高騰の裏には、土地の値上がりがいつまでも続くという「土地神話」を前提としていたことがある。価値を生み出す施設を建てるためではなく、土地自体が永続的に値上がりする「資産」とみなされ、開発計画もないまま投機的に土地取引をする業者が現れた。
現在は商業地の活用可能性に投資が集まった結果として上昇している。特に収益性の高いホテル事業は、仮に客室100室で1泊1万5千円のホテルだと稼働率80%で月3600万円の売り上げとなる。沖縄は全国的に見ても通年の稼働率が安定していて利回りも比較的高いため、世界的に投資先として人気がある。高額で土地を購入しても引き合うため、結果的に地価の上昇をけん引している。
企画した不動産会社によると、所有者に地価を提示する時点でホテルを建設するデベロッパー、運営するオペレーターまで固めた上で、建築単価や運営費用まで計算し逆算して地価を決めているという。容積率の高い国道沿いや広い土地はホテルの部屋数を確保できるため高値で購入されやすい。立地や相場観ではなく、採算性から価格が決められている。
20年3月の那覇空港第2滑走路の供用開始を控え、ホテル建設熱は当面続くとみられる。一方で客室単価がいつまでも右肩上がりに上昇することは想定しづらいため、採算性を基に地価を算出している限りは上昇も一定の水準で落ち着くと予想される。幹部は「その土地をどうプロデュースできるかによって価値が決まる。決して地価相場ありきではない」と強調した。
(「熱島・沖縄経済」取材班・沖田有吾)
(琉球新報 2019年5月28日掲載)