見晴らしの良い高台に、高層マンションが次々と建設されている。北中城村のライカム地域は、眺望と交通アクセスの良さ、大型商業施設や病院が近くにある好環境で富裕層を対象とした物件も多い。
マンション需要がけん引し、3月に発表された地価公示で北中城村の住宅地価格は前年比13%の上昇となり、県内市町村で最高の上昇率を記録した。かつては那覇市など都心部に集中していた分譲マンションだが、建設地域が郊外に拡大している。
背景にはホテル建設との競合がある。商業地は容積率が高く、同じ面積の住宅地に比べて部屋数を多く確保できる。那覇市など都心部の商業地は利便性が高いためマンション用地としての人気が高かった。
近年は観光客が増加していることや、那覇市が宿泊施設の容積率加算を始めたこともあり、ホテル建設熱が高まっている。長期的に収益を生み出すホテルは、マンションよりも高額で土地を購入しても採算が引き合う。「ホテルと競合したら太刀打ちのしようがない。無理して取得しても誰も住めない価格帯のマンションになってしまう」(マンションデベロッパー)のが現状だ。
沖縄はもともと戸建て志向が強い土地柄だ。しかし近年土地区画整理事業が実施された地域では、敷地面積の最低限度が定められ戸建てが高額化している。ライカム周辺のアワセゴルフ場地区でも戸建てには165平方メートル(50坪)以上の敷地が求められる。土地の購入から始めると5千万円を超えることがほとんどで、多くの県民には手の届きにくい水準に達しているため、比較的割安なマンションの人気が高まっている。
交通インフラの充実により、都心部への通勤や通学が可能な地域が広がったことも大きい。今後、道路インフラの整備が進めば、マンションが建設される地域もさらに拡大する可能性がある。
一方、近年は地価に加え建築単価の上昇も著しい。地価は都心部から離れると低下する傾向はあるが、建設需要の高まりで人手や建設資材が不足していることから地域にかかわらず建築単価は高くなっている。そのため、単純に郊外に建設するだけでは価格を抑えることは難しく、マンションの付加価値が求められるようになっている。
ライカム地域に「ベアーズコートライカムグランデ」を建設している住太郎ホームの眞榮城兼春常務は「建築単価は場所を選ばず高い。今後はさらに企画をしっかりして魅力のあるマンションを作ることが必要となる」と指摘した。
(「熱島・沖縄経済」取材班・沖田有吾)
(琉球新報 2019年5月29日掲載)