〈解説〉沖縄県外在住の軍用地主が増えたのはなぜ? 毎年増加の借地料、低い相続評価額… 基地負担が伴わない地主の増に不公平感も


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 国と賃貸借契約を結んでいる米軍用地の地主のうち県外在住者の数が年々増加し、地主全体の9%を占めるまでになっている。投資を目的にした所有権の県外流出が続けば経済的利益だけが持ち出され、基地負担を受ける地元住民の不公平感が大きくなる。基地返還後の跡地利用についても地権者の合意形成が難しくなるなどの弊害が想定される。

嘉手納より南の基地返還が合意され、返還後の開発効果が期待される米軍牧港補給地区(キャンプ・キンザー)=2018年9月撮影

 米軍基地の契約所有者の総数は2012年度の4万4233人から18年度は4万4523人と、300人弱、0・6%程度の増加にとどまっている。これに対し県外在住者の数は、12年度の2786人から18年度の4027人へと44・5%増となり、流出が顕著だ。

 県外地主が増加する要因の一つに全国的な「軍用地投資」の広がりがある。本来、軍用地は所有者が自ら使用できず実需に乏しい土地だ。だが、日本政府が地主に支払う在沖米軍基地の年間借地料は毎年増加し、県によると16年度は総額858億円の規模となった。

 国の低金利政策により、個人資産の運用先である預金金利や国債の利回りが低下。沖縄の軍用地は預金金利よりも割の良い借地料が安定して得られ、相続財産評価額が低めのため相続税対策にもなるなどと宣伝され、この数年、売買価格が高騰している。

 一方で、軍用地料は本来、米軍による強制接収という歴史や、基地周辺の経済発展の恩恵を受けられない機会損失に対する補償という意味合いがある。県外に住む地主が税金を源とする軍用地料を受け取ることは、基地から派生する騒音や事件事故などの基地負担を引き受ける県民からすると違和感を覚える。

 基地の返還についても、那覇市の新都心地区や北谷町美浜地区など、基地返還後に開発が進み雇用など経済効果が飛躍的に向上した。基地は県経済発展の阻害要因になっているという認識は県内では一定程度共有されている。しかし、土地に元々縁を持たない地主が増えることで、返還や跡地利用への熱意に温度差が生じる可能性もある。

 (沖田有吾)