相続税対策や人口増加による旺盛な需要を受けて活発だったアパート建設が転換点を迎えている。地価と建築単価の上昇により利回りが減少しているためだ。
県内住宅地の公示地価は2014年調査で上昇に転じるまで18年連続で下落していた。金融環境が緩和し融資が受けやすくなったことから、5年ほど前からアパート建設が活発になった。相続税対策になる点も後押しとなった。
しかし、状況は変わりつつある。地価、建築単価が急上昇し、利回りが低下したことから金融機関の融資審査も厳しくなっている。ある不動産業者は「以前と比べ、土地から仕入れて建設すると利益が出にくい。家賃は簡単には上げられないので、今後も地価上昇が続くと厳しい」と話す。
多角化の動きも現れている。浦添市を中心に約4千室を管理するマルユウハウジーは地価上昇前に土地を取得し、単身者用物件を中心に安定経営をしている。一方でプロパンガスなど不動産に付随する事業を手がけ、マンション型ホテル開発にも取り組んでいる。當眞嗣史社長は「地主からはさまざまなニーズが出てきている。対応するために選択肢の幅を広げることが重要だ」と話す。
地価上昇は不動産業以外にも影響を及ぼしている。県内石油会社の関係者は「給油所の設置は300~400坪ほどの土地が必要。都心部で土地を買って新しい給油所をつくるのは厳しい」と明かす。給油所は“薄利多売”となるのが一般的だ。1リットル当たりの利益はセルフ店だと10円を切り、コスト増加は経営に跳ね返りかねない。
18年、賃貸地で運営していたある店舗で、地主に賃借料の値上げを要求され、利益を勘案してやむなく店舗を閉じた。「地価の高騰で地主も強気になっている印象だ」という。対応のためにコンビニやコインランドリーなど、店舗複合型の給油所を設置する動きが出てきているという。
レンタカー業界では、車両を置く駐車場の確保が課題になっている。県レンタカー協会の與古田思好専務理事は「当初は空港付近の店舗が多かったが、豊見城市の豊崎付近などに広がり、現在はモノレール駅周辺で敷地を探す形になってきている」と説明する。
観光客の増加が見込まれ、しばらくは業者、車両数とも増え続けると予測しており「業界の成長という点では良いことだが、競争も激しくなる。土地代などのコストが上がっても簡単に価格に転嫁できない」と課題を指摘した。
地価と建築単価の上昇傾向は当面続くとみられる。コストの増加をいかに回避するか、各業界の模索が続きそうだ。
(「熱島・沖縄経済」取材班・沖田有吾、外間愛也)
(琉球新報 2019年6月4日掲載)