prime

軍用地が投資対象に 低リスクで不動産と金融商品の「良いどころ取り」 不動産投資(6)〈熱島・沖縄経済〉42


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
軍用地売買に関する不動産情報の広告が掲載された新聞やチラシ(画像の一部を加工しています)

 沖縄県土の8・3%を占める米軍基地。悲惨な沖縄戦とその後に続いた米軍統治時代を経て沖縄に集中した。騒音や事件・事故など基地がある故に発生する問題は多く、負担軽減を求める県民の声は強い。一方で安定した借地料が入ることから、低リスクで資産運用できる投資対象とみて関心を持つ人が増えている。

 元沖縄防衛局職員で、L&Sコンサルティングの仲里桂一代表取締役は、5月に「専門家が優しく教える!軍用地投資の教科書」(扶桑社)を出版するなど、軍用地投資コンサルタントとして活動する。軍用地投資について「災害が生じても収入を得られる安定性と換金性の高さという、不動産と金融商品の良いところ取りの性質がある」と話す。

 担保価値が高く、現金資産と比べて相続税が抑えられるため、相続対策としても人気がある。競争が激しいマンション開発などと違い、購入すれば誰がやっても同程度の収入がある再現性の高さも魅力という。

 価格を決めるのは「倍率」と呼ばれる相場だ。年間借地料の何倍かを表す数字で、仲里氏の調査では嘉手納飛行場、航空自衛隊那覇基地で58~60倍という。当面返還されないと考えられる基地は長期的な収入が見込めるとされ、人気が高くなっている。牧港補給地区は返還が近いとされるが、再開発により地価の上昇が見込まれるため60~65倍となっている。倍率は上昇傾向で、特に近年は著しく上がっている。

 沖縄防衛局によると、2018年の米軍基地用地所有者のうち国と賃貸借契約を結んでいるのは4万4523人で、そのうち国外を含む県外在住者は4027人(9%)を占めている。相続や贈与に加え、投資として購入したケースも多いとみられる。防衛局によると、賃貸借契約に基づく借地料の金額は、18年度に米軍用地で873億4200万円、自衛隊用地との合計は1001億4100万円と初めて1千億円を超えた。

 一般の土地と違い、歴史や背景から軍用地を単なる投資先として扱わない業者もいる。軍用地売買を仲介する不動産業者は、購入希望者が競合した場合には県内在住者を優先する。「軍用地料は補償の意味合いが強い。沖縄で基地を引き受けていることで騒音などの負担があるので、県内の購入希望者を優先している」と話す。先祖代々引き継いだ地主の中には、県内在住者の購入を希望する人も多いという。

 基地負担を日常的に感じる県民の間には、税金から支払われる軍用地料が米軍基地の維持に活用されることについて抵抗感は根強い。一方で基地内の土地は地主が自由に利活用できず、軍用地料を見込んだ売買をやむなしと考える意見もある。自由に使えない土地が高値で取引されるという基地経済の生んだ「ひずみ」は、大きな葛藤を内包したまま続いている。

(「熱島・沖縄経済」取材班・沖田有吾)

(琉球新報 2019年6月12日掲載)