浦添市の海岸沿いに6月末に開業する大型商業施設「サンエー浦添西海岸パルコシティ」。県内初進出のブランドを含む250店舗が入居予定で、県内最大規模の売り場面積を有するイオンモール沖縄ライカム(北中城村)と並び、沖縄を代表するショッピングモールになることが期待される。
7月にはコンビニ大手セブン―イレブンの沖縄進出を控えるなど、好調な県経済を背景に県内の店舗は増加傾向にあり、事業者を取り巻く商業環境は変化の時を迎えている。
「沖縄県内全域が商圏だと思っている」。パルコシティとライカムの担当者は、店舗の開業を発表する記者会見で同じ言葉を口にした。浦添西海岸を通る臨海道路の開通で那覇市や中北部からのアクセスが容易になり、パルコシティには多くの県民が足を運ぶことが予想される。
ライカムは本島中部の好立地に位置し、高速道路にも近いことから本島全域からの集客を見込める。両店舗は足元のエリアにとどまらず、県内全域をマーケットと見て戦略を展開する。
沖縄を訪れる観光客は増加を続け、雇用情勢の改善に伴い消費も活性化するなど、県内の経済情勢は小売事業者にとって追い風となっている。サンエーパルコの上地文勝社長は「まだまだ沖縄は発展する。人口も増加しており全国にはない消費環境にある」との見方を示す。イオンモールの三嶋章男常務・営業本部長は「ライカムはインバウンド(訪日外国人客)の売り上げが高く、伸びしろがある。インバウンドには成長性がある」と強調した。
県外企業の参入も続き各地で新店がオープンするが、店舗の数が消費需要を上回る可能性も指摘される。
りゅうぎん総合研究所の調査によると、県内の百貨店・スーパー売上高は全店ベースで前年同月を上回る一方、既存店ベースでは前年割れとなる時期が増えた。
同研究所の上原優奈研究員は「以前は新設店が開業しても、県内需要が堅調だったため既存店の売り上げも好調を維持していた」と説明する。最近は消費需要の増加以上に新店舗ができており「競争も激化している」と指摘した。
パルコシティの開業で県内の消費環境にプラスの影響も出ると見られているが、上原研究員は「百貨店や専門店が入居する商業施設などにとっては脅威となる」と感じている。
県内の企業関係者からは「既に沖縄の小売環境は飽和状態だ」との声も聞こえる。大型商業施設の開業やコンビニの新規参入が続き、さらなる競争激化は避けられない。好況の半面で商業環境が厳しさを増す時代に、県内の事業者には生き残りのため対応策も求められている。
(「熱島・沖縄経済」取材班・平安太一)
(琉球新報 2019年6月13日掲載)