【記者解説】実質議論に入らなかった国地方係争処理委員会 本来役割ほど遠く形骸化


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 今回の国地方係争処理委員会の判断は、2月の県民投票で名護市辺野古の新基地建設に伴う埋め立てに反対する民意が示された後に初めて出された県の申し出に対するものだが、再び「委員会の審査対象である国の関与には当たらない」と門前払いした。

 会合数は前回から半減してわずか2回。7月23日の審査期限まで1カ月余りを残してのスピード判断となった。富越和厚委員長は「(県による撤回の効力を止めた国土交通相の判断が問われた)前回と論理は同じだ」と重ねて述べ、前例踏襲の判断を下した。

 県は今回の審査申し出で、国交相による承認撤回の取り消しを不服とした際と、基本的に同じ内容を主張した。

 埋め立て承認の撤回処分を取り消した国交相の決定は「違法な国の関与に当たる」という主張は間違っていないとの考えが基にあるとみられる。だが、審査する側からすると「論点が変わらなければ、結論も変えようがない」(総務省関係者)との見方もある。

 再び審査を申し出る以上、却下された指摘に反論するような、新たな要素を盛り込む努力も必要ではなかったか。

 一方で埋め立て工事の中身に踏み込まず、実質的な論議を避けた係争委の在り方は、国と地方の間のもめごとを仲裁する制度本来の役割を果たしているのかとの「疑念」(玉城デニー知事)は広まる一方だ。制度が形骸化しているとの見方もできる。
 (知念征尚)