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時給1500円、採用者に通勤用の新車貸与も 経済好調の沖縄 人材獲得競争も過熱 商業環境の変化(3)〈熱島・沖縄経済〉45


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さまざまな入居テナントが参加したサンエー浦添西海岸パルコシティの合同説明会=宜野湾市

 サンエー浦添西海岸パルコシティに入居するテナントの求人広告には、千円を超える時給が多く提示されている。「オープニング時給」の名目で、開業から数カ月は100~200円程度、時給を上乗せする方針だ。県内の最低賃金(762円)の倍近い、1500円のオープニング時給も見られた。採用者に通勤用の新車を貸与し、3年勤務した場合は贈与する条件を出すテナントもあった。

 各テナントがさまざまな戦略で人材確保に尽力する一方、人手不足が深刻化する状況下で採用がスムーズに進まない現状もある。

 パルコシティに入居する雑貨店は、オープニング時給だけではなく、通常の時給も千円を超える額に設定した。関東や関西にある系列店の時給が千円程度で、採用担当者は「沖縄は全国平均よりも高い時給で採用する」と説明する。それでも募集定員に達していないようで「好条件でPRしているのに思ったほど人が集まらない」とため息をついた。

 求人情報を取り扱う求人おきなわ(那覇市)によると、近年は最低賃金の上昇幅が大きく、人手不足の深刻化も重なって県内の時給は上昇傾向にある。高校生でも時給800円台を提示するコンビニエンスストアもあり、同社編集長兼審査室長の吉原英樹氏は「最低賃金の時給で社員を募集する事業者は少ない」と指摘する。国際通りの周辺など多様な募集が出ている地域では、好条件の事業所に人材が流れる傾向があるという。

 求職者が勤務先を選ぶ際に重視する項目も多様化している。求人おきなわが運営するウェブアグレでは、勤務先の条件として「超短期(1~7日)」や「土・日休み」などを希望する求職者が多い。「月給20万円以上」や「時給千円以上」など給与面を重視する割合は低く、吉原氏は「働き方を軸にして勤務先を選んでいる。極端に高額な給与でなければ求人面では優位に働かないのだろう」と分析した。

 県内の情報通信関連企業の代表は「土日の出勤を条件に募集をすると採用のハードルが一気に高くなる」と実感する。求人誌やインターネットを活用して人材確保を進めているが、広告を多く出さないと定員を満たせないという。社員1人を採用するために要する広告費などのコストは、10年以上前に4万5千円程度だったのが、現在は14万円程度まで跳ね上がっている。同代表は「時給だけで勝負したら大手には勝てない」と嘆く。

 新たな従業員の確保や、既存社員の定着のため、福利厚生の充実など取り組みを進める事業者も多い。新規出店の増加など商業環境の変化に伴い人材獲得競争も激化しており、各社は試行錯誤をしている。

(「熱島・沖縄経済」取材班・平安太一)

(琉球新報 2019年6月19日掲載)