戦争の悲惨さを教育現場で継承しようと中城村教育委員会が本年度、村内の幼小中の全教員約120人を対象に平和研修を実施することが19日までに分かった。琉球新報の調べでは全教員の平和研修は他自治体になく、沖縄県内初とみられる。学校現場での平和教育の現状に危機感を抱いた島尻や国頭の教育事務所は、本採用になった教員の初任者研修(初任研)で平和研修を充実させるなど、教員が改めて沖縄戦を学ぶ機会が少しずつ広がりつつある。
琉球新報は19日までに、県内41市町村の教育委員会と6教育事務所に電話取材した。平和学習の実践に戸惑う教員が増える中、中城村教委は指導力向上のために全体研修を決めた。8月に糸満市の魂魄の塔などを全員で一斉に巡る。
島尻と国頭の教育事務所は、沖縄戦で住民が「集団自決」(強制集団死)に追い込まれた読谷村のチビチリガマが2017年に少年に荒らされた事件に危機感を抱き、18年度から初任研で平和研修を充実させた。島尻は糸満市のサキタリガマなどを訪れる。国頭は平和研修を復活。今年は県平和祈念資料館から講師を招いての講話を予定する。
那覇教育事務所も平和研修を予定し、八重山と宮古は、地域の戦跡を巡る。
県教育庁は本採用になった教員と採用10年をめどに研修をするが「一堂に集めては無理なので、教育事務所と自治体で平和研修に取り組んでほしい」と話す。
歴史教育に詳しい新城俊昭沖縄大客員教授は「沖縄戦の歴史的背景や現在までどのような影響を与えているのかまで理解を深めてほしい。授業時間もしっかり確保し、生徒たちが理解して発信する力を養えるまでの体系的な学びにつなげてほしい」と要望した。
(豊浜由紀子、新垣若菜)