家族救済へ一歩 ハンセン病家族訴訟判決 「お金で人生戻らず」原告、喜びと無念さ


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ハンセン病家族訴訟の判決を受けて、意見を述べる林力原告団長(左から2人目)=28日、熊本市のKKRホテル熊本

 早朝の雨が上がり、青空が広がる熊本地裁前で掲げられた「勝訴」の二文字。原告や支援者から大きな拍手が湧き起こった。原告561人のうち、約4割が沖縄県在住者のハンセン病家族訴訟で、熊本地裁は元患者の家族が受けた差別と偏見の責任が国にあると認めた。閉廷後の法廷で弁護団の徳田靖之共同代表は原告らと握手を交わし喜びを分かち合った。半面、一部の原告の訴えが退けられたことに、不満もにじんだ。

 熊本地裁には全国各地から原告や支援者が集まり、県内からも多くの関係者が駆け付けた。そこには、ハンセン病回復者で偏見差別の解消に向けた活動に取り組む平良仁雄さん(80)の姿もあった。平良さんの子どもたちも今回、原告となった。

 地裁前でマイクを受け取った平良さんは「病のせいで子どもたちを温かい家庭で育てることができなかった。それも全て国策による被害だ」と判決を歓迎し、「国は控訴をやめ、まずは謝罪してほしい。謝ることなくして原告の前進はない」と声を張り上げた。

 勝訴の報告から2時間後に熊本市内のホテルで開かれた記者会見で、弁護団は「家族に対する差別偏見を除去すべき義務に反した責任を認めた画期的な判決だ」とする声明を発表した。一方で、判決が2002年以降の国の責任を認めず、一部の原告の請求を棄却したことは「不当と評価せざるを得ない」と、もろ手を挙げて喜ぶ内容ではないことを指摘した。

 原告らは判決への複雑な心境を語った。黄光男副団長は「被害が認められたと言いつつも、私の人生、このお金で何か変わるのか。勝訴といっても人生は取り戻しようがない。それを思うと、心の底から喜べるものかな」と割り切れない。

 その上で、判決は一つの「ステップ」であり、ハンセン病問題の解決に向けて「マスコミも市民も取り組んでほしい」と訴えた。