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小売店、過剰出店で競争激化 飽和状態と人手不足で倒産も増 生き残りのカギは独自色 商業環境の変化(4)〈熱島・沖縄経済〉46


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土産店や飲食店が軒を連ね、多くの観光客でにぎわう国際通り=那覇市

 県内消費の拡大や観光客の増加を背景に沖縄のマーケットは活性化し、那覇市内を中心に飲食店や小売店の開業が相次いでいる。店舗の増加で消費者の選択肢が増え、購買意欲の刺激など経済効果を生み出すとの見方もある。一方、事業者は他社との競争にさらされ、場合によっては倒産に追い込まれるケースも出ている。

 「沖縄はオーバーストアの状況になっている」。県内の食品卸業者の代表者は県内市場に飽和感を感じている。コンビニエンスストアや商業施設が各地で開業する中で、7月にはセブン―イレブンという“黒船”の上陸を控える。店舗数が増加を続けても、県内消費が大幅に拡大する状況にはないとして「パイの奪い合いが加速する」と断言する。那覇市など都市部を中心に、過当競争の中で淘汰(とうた)される事業者を目にすることもあるという。

 店舗数の増加は卸業者にも影響を与えている。新たな店舗が開業すると商品の配送先が増え、人件費などコストが増加する。消費量に変化はないため、配送先が増えても売り上げが大きくプラスに転じることはないという。働き方改革が推奨される近年は無理な残業を行うことはできず、厳しい運営を強いられている。同代表は「卸先が一定の店舗数を超えると誰ももうからない」と嘆く。

 東京商工リサーチ沖縄支店によると、業種別の県内倒産件数は長年、建設業が最多となっていたが、2017年と18年はサービス業が首位となった。公共や民間共に工事の需要が底堅く、建設業者の経営環境が好転する一方で、競争の激化でサービス業者が倒産しているという。

 深刻化する人手不足も課題となっており、同支店の担当者は「好景気でも人材が確保できない事業者は需要を十分に取り込めない。仕事を受けられず、業績も上がらないという悪循環に陥って店を閉める事業者も出ている」と指摘した。

 競争激化が進む中で、コーカス(那覇市、緒方教介社長)が展開するオーガニックせっけんショップ「SuiSavon(首里石鹸)」は、独自ブランドを確立して顧客の獲得を進めている。元々はコールセンターだが、女性従業員の多様な働き方に応える一環として沖縄土産の販売部門に新規に参入した。多くの店舗が軒を連ねる那覇市の国際通りで好調を維持しているという。

 緒方社長は「首里石鹸の店舗でしか買えない商品をそろえている。何でも売っているという店舗は今後、厳しくなるだろう。情報であふれる今の時代は商品を絞った方が消費者にとって分かりやすい」と強調し、数多くの土産品を取り扱うよりも、特徴を際立たせた自社ブランドを中心に扱う店舗が競争環境を勝ち抜けるとの考えを示す。

 各社がしのぎを削る厳しい競争環境に負けないため、県内企業も努力を重ねて前に進んでいる。

(「熱島・沖縄経済」取材班・平安太一)

(琉球新報 2019年6月25日掲載)