大型商業施設の開業や大手コンビニエンスストアの進出など、県内の小売業を取り巻く環境はめまぐるしく動く。人口や観光客の増加が見込まれる沖縄に注目が集まり、今後もさまざまな店舗の開業や県内進出が予想される。県内で事業を続ける既存店は独自性の確立や地域密着など、さまざまな戦略を打ち出して他店との差別化を進めている。
百貨店デパートリウボウは海外のブランドを取りそろえながら、沖縄の優れた特産品も豊富に集めることに注力する。リウボウホールディングスの糸数剛一会長は「観光客は沖縄にしかないものを求めている。海外ブランドの輸入にチャレンジしながら、沖縄のいいものも紹介する」と戦略を語る。リウボウの「樂園(らくえん)百貨店」では県内や海外の優れた商品を取り扱い、多くの客を呼び込む。
糸数会長は「県内でパイを奪い合うのは得策ではない。競争だけでは互いに疲弊する」と警鐘を鳴らす。県内で他店を打ち負かして売り上げを伸ばしたとしても、新たな県外大手企業が進出した場合に競争に負ける可能性があるという。糸数会長は「競合店対策を進めるのではなく、独自性を出しながら選ばれる店舗を目指すことが重要だ」と強調する。
県内各地で「タウンプラザかねひで」を展開する金秀商事の知念三也社長は、スーパーやコンビニに加えてドラッグストアやディスカウント店の進出が増えていることに触れて「最近は意識する相手が増えた」と語る。県内消費の拡大でマーケットは活性化する一方で「全体の店舗数が増えているので、既存店ベースで売り上げを伸ばすのは難しい」と実感する。
大型店舗との差別化を図るため、同社は地域に密着した店舗づくりを強化する。タウンプラザかねひでを「市場スタイル」に改装し、各地の特産品などを積極的に取り扱うなどして地域との関係を深めている。知念社長は「チェーン店だから同じ店舗というのではなく、地域に寄り添った展開をしている。大型店とは異なる方法で事業を進める」と力を込めた。
沖縄国際大学産業情報学部の宮森正樹教授は「競争環境が激しくなる中で、各企業が自社のポジショニングをどうするかが求められる」と指摘する。新たな店舗が開業すると、既存の店舗がなくなる「スクラップ・アンド・ビルド」が起こると分析する。新店舗に淘汰(とうた)されないためにも、独自性の追求は不可欠になるという。
宮森教授は「これまでのように幅広い顧客を獲得しようとしたら大手に負けてしまう。ターゲットを絞ることで生き残れるはずだ」と今後の方向性を示す。
競争で互いをつぶし合うのではなく、共存共栄の道に進めるか、今後の小売業界の動向が注目される。
(「熱島・沖縄経済」取材班・平安太一)
(琉球新報 2019年6月27日掲載)