〈重荷を負うて道を行く 翁長雄志の軌跡〉28 第5部 那覇市長 窓口改善、ISOも取得


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ISO9001認証取得に向け、業務を確認する翁長雄志=2001年12月

 那覇市長就任直後に翁長雄志が手をつけた仕事の一つが行財政改革だ。雄志は市長公用車を廃止し、民間のハイヤーを導入することで年間650万円を削減すると表明した。

 秘書課長だった翁長聡は「市長運転手は正規職員で時間外手当が付くので、親泊康晴前市長のころは部長より給料が高いと言われていた。『これを改革したらうけますよ』と言ったら、市長は『ではやりなさい』と即答だった。その後、助役車も廃止した」と語る。

 他にも弔電を廃止して年間100万円ほどを削減。市の施設の民間委託を検討する方針も示した。窓口対応に、国際標準化機構(ISO)が定めた国際的な品質保証規格ISO9001を導入することも目指した。

 節目には雄志が自ら窓口に立った。21世紀に入る2001年1月1日、午前0時から窓口を開けて婚姻届を受け付けた。午前0時のセレモニーで7組の市民が婚姻届を提出し、雄志が祝辞を述べて記念受領証を手渡した。

 仕事始めの1月4日からは「さわやか窓口応対」と名付けて職員の意識改革をアピールした。前年12月に接遇インストラクターの研修を受けた本庁市民課、国民健康保険課などの職員が1月4日午前8時半、窓口に起立整列し「おはようございます」と市民にあいさつ。「いらっしゃいませ」「お待たせしました」などと声を掛けた。雄志や市三役、部長が定期的に窓口に立って改善を印象付けた。

 ISOの認証取得に向けて2001年にプロジェクトチームを設置。窓口業務を2時間延長し、繁忙期は土、日曜日も窓口を開けるなど試行錯誤した。同年5月から「さわやか対応で市民満足度の向上」などを目標に掲げ、対応改善や証明書発行などの待ち時間短縮などに取り組んだ。

 12月にはISOの136の要求項目に沿った業務マニュアルに従い、窓口サービスを始めた。02年2月には市民課に市長席を設け、午前中の数時間、そこで決済業務を実施した。決済を終えると窓口で住民票交付などの業務に当たった。7月に入ると市はISOの本審査を受け、7月23日に認証を取得した。県内自治体では初、全国の県庁所在都市でも初めてだった。

 この年5月には那覇市経営改革アクションプランも策定した。全ての事務事業を現状維持から廃止・休止までの5段階に評価し、04年度までに見直す計画の策定などを柱に、外郭団体の補助金削減も盛り込んだ。

 秘書だった知念覚は「市長は言葉の力もあったが、言葉だけでなく行動が強烈に伴っていた。職員との信頼関係を築きながら、窓口対応の改善につなげた」と振り返った。

 (敬称略)
 (宮城隆尋)

(琉球新報 2019年6月18日掲載)