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サンエーパルコ進出の浦添市の商工関係者が「以前ほど大型店が脅威でなくなった」理由 商業環境の変化(6)〈熱島・沖縄経済〉48


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まちゼミの取り組みを通じて地域とのつながりを深める「いは薬局」=2017年9月、浦添市城間

 サンエー浦添西海岸パルコシティ(浦添市西洲)は6月27日の開業初日から大勢の人でにぎわった。注目度の高い大型商業施設の開業に、地元・浦添市の商業関係者は「来店客の減少など多少の影響は出るだろう」と見る。一方で施設開業に伴う交流人口の増加で「地域活性化につながる」との期待も高まる。地域の商業者は大規模施設との「競合」ではなく「共存共栄」の道を模索する。

 「以前ほど大型施設が脅威ではなくなった」と語るのは浦添市商店会連絡協議会の山城興光会長だ。商店主が顧客とのつながりを深めることで、大型施設開業の影響を受けにくい環境づくりを進めてきた。

 浦添市内の店主らが講師としてさまざまな知識を地域住民に伝える「まちゼミ」の事業を2017年度から開始して、地域住民にとって身近な店舗を目指している。

 パルコシティの開業で来店者の減少など一定の影響は見られたが、山城氏は「数カ月では元通りになるだろう」と見ている。まちゼミで地域との交流を深めたことで、客離れを防げているという実感がある。

 むしろパルコシティの開業など市内各地が発展する中で、地元の商業者も体力をつけて前進することが必要と見ている。山城氏は「商店のオーナーとお客さまが絆を深めることが今後は重要になる。大型店にはできない、小規模店舗ならではのきめ細かさが求められる」と話した。

 浦添市ではパルコシティが位置する西海岸に加えて、沖縄都市モノレールの延長区間となる東部エリアでも商業施設建設など開発計画が持ち上がる。米軍牧港補給地区(キャンプ・キンザー)が返還されれば区画整理で人口増が見込まれ、モノレール駅周辺の活性化も予想される。

 浦添商工会議所の浦崎勝専務理事は「大型商業施設のオープンは経済効果をもたらす。キンザー返還後には周辺が一体となった開発が進むはずだ」と将来を見通す。

 那覇空港やクルーズ船ターミナルからアクセスしやすいパルコシティには、国内外から観光客が訪れる可能性が高い。パルコシティに足を運んだ観光客を市内の商業地域に呼び込むことも想定する。浦崎氏は「人が集まることで浦添市全体で相乗効果を生み出せるはずだ」と考える。

 一方で、渋滞の発生で市民生活や経済活動に支障が出るなどの課題も想定され、「インフラ整備を進めることは大事になる」と強調した。

 大型商業施設の開業という波に流されることなく、浦添市では地域に根差した取り組みが続く。大型店舗に対抗するのではなく、各店舗が存在感を強めながら共に発展する未来を思い描いている。

(「熱島・沖縄経済」取材班・平安太一)

(琉球新報 2019年7月3日掲載)