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2022年に新たな市場が完成する牧志公設市場が地元客を呼び込むには… 商業環境の変化(7)〈熱島・沖縄経済〉49


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買い物客でにぎわいを見せる第一牧志公設市場の仮設市場=1日、那覇市松尾

 県民の台所として沖縄の食文化を支え続ける那覇市の第一牧志公設市場。雑誌やテレビなどで紹介されたこともあり、国内外から訪れる大勢の観光客でにぎわいを見せる。一方、郊外に大型商業施設が整備されたこともあり、地元客の呼び込みに苦戦することもあるという。2022年には新たな市場が完成予定で、関係者は来店者と店舗の距離が近い「マチグヮー」の魅力を強化し、大型店との差別化を図る。

 「昔のように那覇で買い物するのが当たり前という時代ではなくなった」。第一牧志公設市場の粟国智光組合長は、買い物客の消費行動の変化を実感する。以前は那覇の中心市街地に商店が集積し、食料品や生活雑貨を購入するために多くの人が足を運んだ。近年は新都心や近隣の浦添市、豊見城市などの大型商業施設で買い物をする人が多くなっているという。

 粟国氏は「市場には沖縄伝統の食材を扱う店舗も多い。大型店と差別化する必要がある」と指摘する。

 正月など季節ごとの行事に合わせて固定客が買い物に訪れているが、さらなる集客のために駐車場不足など課題解決が必要になると考える。県内人口や観光客の増加で、市場周辺の駐車場がホテルやマンションに建て替えられ、車を使う地元客が足を運びにくくなっているという。粟国氏は「いい商品を扱っても、お客さまが市場にアクセスできなければ経済的な損失につながる。行政と連携しながら課題解決をする必要がある」と話す。

 新たな市場の開業に向け粟国氏は「沖縄の文化を発信する拠点をつくる」と目標を掲げる。来店者と交流を深めながら商品を販売することが市場にあるマチグヮーの強みで、大型商業施設とは異なる事業展開で集客できるとみている。粟国氏は「地元のお客さまを大切にしながら観光客との調和も進める」と強調した。

 沖縄国際大学産業情報学部の宮森正樹教授は「大型商業施設の開業後に小規模店が存続するためには、地域密着と専門性の深化が求められる」と説明する。

 大型の家電量販店が近くに進出した後でも、地域の家電店が経営を維持したケースを目にしたこともあるという。宮森氏は「地域の家電店が専門的な商品を扱ったことで、量販店では満足できない顧客を獲得できた」と語る。

 県内ではサンエー浦添西海岸パルコシティ(浦添市)やイオンモール沖縄ライカム(北中城村)など、本島全域を商圏にする大型施設に多くの人が集まる。宮森氏は「地域の商店は大きな商業施設にできないオリジナリティーを追求することで経営を維持できるはずだ」と方向性を示す。

 県内の競争環境が激しくなる中で、地域の小規模店も新たな挑戦を続けていく。

(「熱島・沖縄経済」取材班・平安太一)

(琉球新報 2019年7月4日掲載)