[日曜の風]ラグビーの精神 戦争させない人の環


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 今日は七夕。織姫さんと彦星さんは一年に一度しか逢(あ)えないそうで、こちらまで切ない気持ちになりますが、最近こんなフレーズを目にしませんか?「4年に一度じゃない。一生に一度だ」。今年、日本で、そしてアジアで初めて開催されるラグビーのワールドカップのキャッチコピーです。

 私、ラグビー詳しいですねとよく言われるのですが、たまたま6歳から16歳まで、花園ラグビー場に住んでいただけなのです。父が当時、近鉄というチームのコーチを、母が同チームの合宿所の寮母をしていたのですが、そのとき花園ラグビー場のメインスタンドの下に近鉄の合宿所があったのです。ラグビーは多感な時期の日常の一コマで、常に屈強なラガーマンと暮らす日々のなかで、人格形成がなされたと思われます。

 激しくぶつかり合うスポーツというイメージが強いラグビーですが、「品位」「情熱」「結束」「規律」「尊重」という五つを大切にしない選手は、誰からも尊敬されません。全てのゲームは終わったら「ノーサイド」、敵味方関係なく相手をたたえ合います。ファンも、ラグビーのスタンドは本来、隣に相手チームのファンがいるのが当然で、素晴らしいプレーを見たらファン同士でたたえ合います。ラグビーは、選手もレフリーも観客も、みんな仲間なんです。

 元日本代表監督の故・大西鐵之佑さんは早稲田大学教授としての最終講義でこう語っています。「権力者が戦争のほうに進んでいく場合には、われわれは断固として、命をかけてもそのソシアル・フォーセス(社会の基礎集団・社会的勢力)を使って(選挙で)落としていかないと、あるところまでウワーッと引っ張られてしもうたら、もうなんにもできませんよ」と。

 自らも戦争に行った名将は、戦争に突入する前に、闘争的スポーツを通じてフェアプレーを体現し、どんなに勝ちたくともここを踏み越えてはならないという倫理を身に着けた者たちがグループを作り、「戦争をさせないための人々の抵抗の環」とすべしと説いたのです。そのためにラグビーがあるのだと。選挙にもラグビーにも、ぜひ足をお運びくださいませ。

(谷口真由美、法学者・全日本おばちゃん党代表代行)