【記者解説】これで終わりではない 判決確定後も沖縄だけに残る問題


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 ハンセン病家族訴訟で政府は控訴しない方針を明らかにした。強制隔離政策で生じた家族の偏見差別の被害を国の責任と認めた判決が確定する。ただ、米軍統治下の沖縄で実施されていた隔離政策の国の責任は認められていない。元患者家族の救済の道を開いたが、依然として障壁が残る。

 判決は沖縄の米統治に関して「行政権の執行が停止され、沖縄の内政に何ら関与できない状況」だとして、隔離政策の必要性がなくなったと旧厚生省が認識した1960年から72年の本土復帰までの国の一部責任を免じた。

 しかし、沖縄の施政権が日本から切り離されたのは沖縄が望んだものではない。米統治を理由に沖縄の元患者家族の被害から目を背けてはならない。

 ハンセン病患者の隔離政策は戦前から沖縄を含む全国で実施された。国の控訴断念後、原告団が求めた「被害者全員が一括一律に救済される制度の早急な創設」が急務となる。

 安倍晋三首相は元患者家族は「筆舌に尽くしがたい経験」と認めた。しかし、国は訴訟で責任を認めずに争ってきた。元患者家族が受けた偏見差別の被害を長きにわたって放置してきた国の責任は重い。

 国は元患者家族が求める謝罪についても態度を明らかにしていない。元患者家族の被害を軽視せず、真摯(しんし)に向き合った国の対応が救済に向けたさらなる一歩となる。

(安富智希)