コンビニエンスストア大手のセブン―イレブンが11日、沖縄に初出店する。2017年に沖縄進出を表明して約2年。全国と同じ品質で商品提供する体制を整え、14店舗を一斉オープンする。ファミリーマートとローソンが550店舗以上を展開する県内に、後発としてセブンが攻め入る格好となる。競争激化が予想される環境下で、大手の強みを生かしてシェア拡大を狙う。
「一日でも早く沖縄に出店したかった」。初出店を目前に控えた10日、玉城デニー知事と面談したセブン―イレブン・ジャパンの古屋一樹会長は、県内での事業展開に意欲を示した。
■地域密着を強調
浦添市やうるま市に食品工場を建設し、本島エリアに総菜やデザートを配送するインフラを整えた。14店舗を同時開業し、5年で250店舗まで拡大する土台はできあがった。
県内シェアの拡大のため、地域密着の推進を戦略の一つに取り入れる。県内の大手企業とフランチャイズ契約を結んだほか、県出身者を個人オーナーに迎え入れた。古屋氏は「地元の人に店長をやってもらう体制にした。非常にいい人材が集まってくれた。地元の関係者の協力があったから沖縄でオープンできる」と満足げに語った。
これまでに県内で約1万人にアンケートを実施し、県民がセブンに求める内容など情報収集も強化した。セブンが全国で展開するブランドを提供しながら、沖縄独自の商品も開発して固定客を増やすという。
■県内市場に注目
10日に記者会見したセブンは、県内マーケットが秘める高い可能性にたびたび触れた。拡大を続ける入域観光客数に加えて、県内では人口も増加する。セブンの現地子会社、セブン―イレブン沖縄の久鍋研二社長は「沖縄はコンビニの利用頻度が高く、外食などのニーズも高い。コンビニのマーケットとして魅力があり、250カ所の出店が十分できる」と強調した。
現時点の目標は250店舗に設定しているが、状況に応じて出店数の増加も視野に入れている。
沖縄国際大経済学部の宮城和宏教授は「沖縄は消費や需要が拡大しており、市場規模も大きくなっている」と県内の状況を解説する。セブンの進出で今後も県内でコンビニなど店舗数の増加が見込まれる。宮城教授は「すでに競争がある中でセブンも進出する。市場の拡大を上回るペースで出店数が増える可能性もある」と分析する。
総菜など食品関係が強いセブンが展開することで、競争環境の激化は既存のコンビニに加えてスーパーや飲食店にも波及すると見られている。県内小売業に詳しい経済関係者は「コンビニ、スーパーの垣根を越えた激戦になるはずだ。同じ企業グループ内で競合するケースも出るのではないか」と見通した。
コンビニ界の「王者」と言えるセブンの開業が、沖縄の流通・小売業界全体の勢力図をどのように書き換えていくのか。消費者の期待と経済関係者の懸念が交差する中で、コンビニ三強時代が幕開けする。
(平安太一)