【東京】新たな地平を切り開いた―。ハンセン病家族訴訟を巡り政府が正式に謝罪した首相談話を発表したことを受け、原告団に喜びが広がった。だが、米統治下の沖縄における強制隔離政策に国は責任を負わないとした判決への批判は強い。差別にさらされることを恐れ原告に加わらなかった人も多く、原告は「声を上げられていない全国の家族の涙を、安堵(あんど)の涙に変えてほしい」と一律救済に期待を寄せた。
県内在住の60代女性は、判決で米統治下の沖縄は対象外とされていたと知り「がくぜんとした」。判決が名護市辺野古の新基地建設問題でも民意を無視して工事を進める政府の姿勢と重なり「この国の三権は、沖縄差別という点で通底しているのか」と疑念を募らせた。それでも、首相談話が家族を対象とした新たな補償措置を講じるとしたことに希望を託した。
県内在住の60代男性も「判決には心の中では不満もあった。きょうは沖縄のことを思いながら本当に喜んでいる」とかみしめた。
一方、原告らは控訴期限となる12日までの安倍晋三首相との面会を求めてきたが、首相は選挙応援で三重県に行き、この日の面会はかなわなかった。原告団から「多くの原告が東京におり、本当はきょう会ってほしかった」(黄光男副団長)と残念がる声も上がったが、首相が談話で直接面会する意向を示したことに期待を寄せた。
首相談話を受け、今後交渉が始まる救済策に焦点は移る。弁護団共同代表の徳田靖之弁護士は米統治下の沖縄における強制隔離政策に国は責任を負わないとした判決について「乗り越えなければいけない最重要課題だ」と改めて強調した。沖縄と県外を平等に扱う補償の実現に向け取り組む考えを示した。