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後発エリアで〝王者〟セブンが取る戦略とは… コンビニ激闘時代(4)〈熱島・沖縄経済〉53


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
関係者が見守る中で開業のテープカットをするセブン―イレブン・ジャパンの古屋一樹会長(右端)=11日、那覇市松山

 セブン―イレブンが沖縄に初上陸した11日、各地の店舗は多くの来店者でにぎわい、一部で入場制限がかかるほどの大盛況となった。県民の期待の高さをうかがわせ、コンビニ国内最大手としての高い人気を示した。現地子会社であるセブン―イレブン沖縄の久鍋研二社長は「沖縄でもトップを目指す」と意気込む。

 「絶対に負けない商品がある」「セブンでしか食べられない安心で安全な食品がそろった」。全国47都道府県への出店を達成したセブン―イレブン・ジャパンの古屋一樹会長らは、沖縄での店舗開業セレモニーで自社商品の魅力を何度もアピールした。

 県外の後発エリアでもセブンは事業を拡大した実績があり、県内の経済関係者は「沖縄でも強さを発揮するはずだ。セブンが目標に掲げる250店舗はあっという間だろう」と見る。

 セブンが全国で強さを発揮してきた戦略の一つが、一定のエリアに集中的に出店する「ドミナント(高密度多店舗出店)方式」だ。沖縄でも第1号店を那覇市を中心に本島中南部で14店舗一斉に開店させた。多店舗展開は数で商圏を制圧するとともに、自社専用工場から送り出すプライベートブランド商品の物流を効率化させる効果もある。

 現在、離島県の沖縄にファミリーマートとローソンが550店舗以上を展開し、セブンの出店ペースで競争はし烈さを増す。久鍋社長は「一番の競争相手はお客さまだ。私たちの商品やサービスを提供することで来店頻度を上げることが重要になる」と強調し、全国で築き上げた独自の戦略で県内シェアの拡大を進める考えだ。

 ファミマとローソンは共に県内主要企業と提携し、地域色を前面にした事業展開で支持を得ている。

 沖縄国際大経済学部の宮城和宏教授は「県内の既存コンビニは地元企業と協力することでシナジー効果が発揮でき、収益も多様化できている」と指摘し、「全国的には『王者』のセブンが、沖縄でも同じ手法で受け入れられるのか。今後は地域色を強める必要が出てくるかもしれない」と動向を注視している。

 セブンは沖縄進出に向けて県民へのアンケートなどを行い、県産食材を使った商品の開発・販売など万全の体制を整えた。セブン沖縄の久鍋社長は「おいしいと思ってもらえる商品を生産することで他社と差別化ができる。沖縄独自の商品でもやっていける」と手応えを感じている。

 一方、独自性の高い食文化や生活習慣が広がる沖縄の市場は県外と全く違うとの見方もある。県内の小売関係者は「セブンが沖縄の商品を作ったとしても、どれだけの県民が開発に関わったのか。県民が好む味は県民にしか分からない」と冷ややかだ。別の小売り関係者は「自分たちは王者だという考えで来たら、沖縄では足をすくわれる」と警鐘を鳴らす。

 国内最後の進出地として足を踏み入れた沖縄で結果を残せるか、最大手の地位を築いてきた戦略の行方に注目が集まっている。

(「熱島・沖縄経済」取材班・平安太一)