【記者解説】沖縄県が国を提訴、県の狙いは?


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 米軍普天間飛行場の移設に伴う沖縄県名護市辺野古の新基地建設を巡って県が新たに提訴したのは、行政指導に従わず工事を続ける政府に対抗するためだ。新基地建設反対の民意を背に、辺野古沿岸部が日々埋め立てられるのを看過できないとの姿勢を示す必要がある。裁判で民意に反して政府が工事を強行している現状をつまびらかにする狙いもある。今回の訴訟は地方自治の在り方が問われる裁判ともなる。

 2015年に翁長雄志前知事が実行した埋め立て承認取り消しを巡る裁判でも今回と同様、行政不服審査制度を政府が使えるかどうかが問題になった。だが、県と政府の和解によって訴訟を取り下げたため、司法判断は出ていない。今回の裁判で初めて「国が誤った形で行政不服審査制度を使った場合に、地方自治体の側から裁判でただすことができるのかどうか」(県関係者)が問われる。

 もし今回、県の審査申し出を却下した総務省の第三者委員会・国地方係争処理委員会と同じように、裁判所が県の主張を審理せず門前払いした場合、地方自治は危機に直面する。同じ政府内の省庁が地方自治体の行為を取り消すことが可能になる上、自治体の側から異議を唱える道が閉ざされるためだ。

 県は17日の記者会見で地方自治の観点から問題点を強調した。日本全体の問題であることを強調し、全国世論を喚起する狙いがあるとみられる。
 (明真南斗)