【記者解説】オリオンビール社長に早瀬京鋳氏就任から見えること


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今後の経営について語る社長兼最高経営責任者(CEO)に就任した早瀬京鋳氏(中央)らオリオンビールの役員=22日午後、那覇市安里のホテルロイヤルオリオン(田中芳撮影)

<解説>
 早瀬京鋳氏(51)が経営トップに就任し、オリオンビールは新体制の下で事業が本格的に始動する。マーケティングやブランド戦略の専門家を経営陣にそろえ、オリオンの価値向上と販路拡大につなげる方針を明確にした。縮小が続くビール市場を取り巻く厳しい環境を外部人材の力を借りて打破し、沖縄の企業として成長できるか試される。

 オリオン株の買収で親会社となった野村ホールディングスと米投資ファンド、カーライルグループは、5年後に株式上場し、「沖縄の企業に株を買ってもらい沖縄資本に戻す」(前川雅彦野村キャピタル・パートナーズ社長)という青写真を描く。5年間で買収価格以上に企業価値を高めるため、本業であるビール部門の販売立て直しと収益力の強化を新社長の早瀬氏に託した形だ。

 オリオンの2018年度のビール類売上数量は、県内が前期比5・9%減、海外・県外は同0・2%の微増にとどまる。ビール販売が苦戦する一方でブランドとしては一定の認知度があり、新たな営業戦略を進めることで消費拡大につながる可能性も指摘される。

 外資系大手メーカーでマーケティング責任者を歴任してきた早瀬氏は、市場調査を通じてニーズを把握し、県内シェアの回復や新たな市場の開拓などを進める考えを示している。沖縄らしさを追求しながら、大手メーカーがまねできない独自性も打ち出す予定だ。

 早瀬氏は地域貢献も経営目標に盛り込んだ。県外資本の傘下に入ったことで「オリオンが沖縄の企業ではなくなる」との懸念が今も強い。沖縄で生まれ育った企業として地域に根ざし、ブランド価値を高めながら国内外に事業展開することで、新たな経営体制への理解と評価につながる。

 ただ、現時点ではまだ具体的な手法は示せておらず、将来像が見えにくい側面もある。描くビジョンを社員や消費者、地域と共有する上で、11月をめどとする中期経営戦略が最初の試金石となる。(平安太一)

【早瀬氏略歴】
 はやせ・けいじゅ 1968年3月6日生まれ、福岡市出身。九州大経済学部を卒業後、91年に家庭用品大手メーカーP&Gノースイーストアジアに入社した。英通信大手ボーダフォン、コカ・コーラジャパンで勤務し、トリンプ・インターナショナル・ジャパンで副社長を務めた。2017年にルルレモンアスレティカ日本法人社長に就任した。