〈重荷を負うて道を行く 翁長雄志の軌跡〉33 第6部 市長再選 「塩漬け土地」全て処分


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那覇市長再選を喜ぶ翁長雄志=2004年11月14日、那覇市銘苅の選対事務所

 2004年11月14日の那覇市長選で再選を決めた翁長雄志は、新都心地区への新庁舎建設について「補助もなく約200億円が必要で、今の時代は造ることはできない」と当面は建設しない考えを示した。「塩漬け」となっている建設用地をどうするかについて「決断を2005年度に行う」と取材に答えている。

 市の要請に基づき土地開発公社が公共用地を先行取得したものの、事業化のめどが立たずに長期保有し利息が膨らむ「塩漬け土地」の解決は、雄志が初当選した2000年の市長選から訴えてきた。バブル崩壊以降、全国で同様の問題が起きていた。

 国が支援策として04年に打ち出した土地開発公社経営健全化対策に沿い、市は「那覇市土地開発公社の経営の健全化に関する計画」を策定した。05年度からの5年間で7万5千平方メートルの用地を買い取る計画だ。

 雄志は06年、学識経験者や関係団体などで構成する「那覇市新庁舎基本構想審議会」を設置することを明らかにし、市庁舎を現在地で建て替える可能性が高いことを表明した。市には現在地と新都心双方の住民から市庁舎の早期建設を求める要請が相次いだ。

 07年7月には記者会見で新都心への建設を見直し、用地を売却する方針を表明した。都市計画変更に伴う住民説明会では新都心の住民から懸念の声が相次ぎ、雄志は厳しい財政状況などを説明して理解を求めた。

 おもろまちの市庁舎建設用地は08年2月、民間事業者に売却され、マンションや商業施設が入居するビルが建設された。

 08年には中学校用地として公社が取得していた市上之屋の約2万3千平方メートルを「民間利用」を目的に約58億円で市が取得した。市教育委員会が05年に学級数の推移予測を基に「新設は不要」との見通しを示したことから、国の支援を受けて債務解消を図る方針に転換した。09年度から3年間、市役所建て替えに伴う仮庁舎を置いた。

 市議会では野党から「公共施設建設を約束した市民に十分な説明がない」などと批判があった。市側は国の支援を受けるために「建設時期や施設内容など、明確な計画がなければ起債が厳しい」などと答弁した。

 市土地開発公社は2010年度、新都心地区の小学校用地を市に売却して「塩漬け土地」とされていた約8万7500平方メートル、約191億円(累計利息含む)について、全ての処分を終えた。

 2010年の市議会12月定例会で、雄志は「市長就任当時の大きな課題の一つだった。子や孫につけを残さないためにも塩漬け土地を解消できて感慨深いものがある」と述べている。

 (敬称略)

 (宮城隆尋)