中央最低賃金審議会が、沖縄の最低賃金について、目安として26円の引き上げを示した。4年連続の大幅アップが見込まれる。最低賃金の上昇により、県内でも労働者の所得向上につながることが期待される。一方で急激な賃金の上昇は企業の収益を圧迫する可能性もあり、県内経済関係者から懸念の声も上がった。
連合沖縄の東盛政行事務局長は「賃金が上昇することで能率が上がり、賃金上昇以上の生産性を発揮して経済が成長する」として、引き上げの必要性を強調する。中小零細企業の経営を守りながら引き上げを目指すとして「行政としても支援対策などが必要になる」と話した。
沖縄観光総研の宮島潤一代表は「観光従事者の賃金は低い。最低賃金上昇は観光業界の底上げになる」と感じている。ホテルは時給800円代以上が多く、最低賃金が目安通りに上がっても大きく経営に影響しないと分析する。
一方で県経営者協会の金城克也会長は「大幅な賃金引き上げは企業経営に与える影響が大きい」と憂慮する。沖縄経済同友会の渕辺美紀代表幹事は、上昇は目指すべきだが段階を踏む必要があるとして「急激な上昇はしわ寄せが来る」と指摘した。
コンビニ業界では、本部に売り上げの約半分をロイヤルティーとして支払い、さらに雑費も引かれ手元に残る利益はわずかという店舗もある。人件費を削るためにオーナーが夜通し働く店舗もある。
県内コンビニのオーナーは、最低賃金が26円上がった場合、1カ月当たり4万円以上の人件費が増加すると試算する。「深夜手当はさらに1・25倍の賃金が上乗せされる。経営がギリギリの店舗は大変だろう」と話す。従業員の給料が上がることには賛同するが「ロイヤルティーは変わらない。(給料支払いの)出口は変わっても(収入の)入り口は変わらない」と不安を募らせた。
中小企業団体中央会の上里芳弘専務理事は、特に人数を多く雇用している企業に影響が出ると分析する。「仕事の発注額などがこれまでと同じであれば苦しくなる」とし、公共事業の発注額を上げるなどの対策が必要との認識を示した。県トラック協会の宮平仁勝専務理事は、運転手確保のために賃金が上昇傾向にある一方で、運送代は急に上がらない状況を説明する。「高速代金を荷主さんに負担してもらうなど、物流を維持するために料金体系の改定や慣習を改めていく必要がある」と話した。