【糸満】沖縄県の中城村教育委員会は1日、村内の公立幼小中学校の全教員を対象にした平和教育研修会を実施した。初任者や平和学習の担当教諭を対象にした研修会を実施する自治体はあるが、全教員向けは同村が初とみられる。沖縄市平和ガイドネットワークの案内を受け、約120人が糸満市の沖縄師範健児之塔や韓国人慰霊之塔などを巡って沖縄戦の実相を学び、次世代への継承の大切さを再確認した。
戦争体験者の減少で継承の機会が減り、学校現場では若い教員らから平和教育の実践に戸惑いの声が上がる。中城村教委は、教員らの沖縄戦に関する指導力向上や校種間での課題共有を目的に研修実施を決めた。
沖縄師範健児之塔では、ガイドの照屋盛行さん(79)が「卒業すれば、皆さんと同じ教員になるはずだった人たちの碑だ」と涙ぐみながら紹介し、「戦争の悲惨さを伝えるのはもちろんのこと、自身の知識を過信せず教える努力を続けてほしい」と訴えた。
戦跡巡りには、戦争の被害者としてだけではなく加害者としての一面も持ち合わせていることを学ぶため、「韓国人慰霊之塔」も加えられた。現役小学校教員でガイドを務める照屋泉さん(44)は「今からの子どもたちは外国に行く経験も増える。実際にあった出来事を教えることはとても大切だ」と強調した。
中城小の比嘉剛人教諭(40)は「初めて回った所ばかりだった。伝聞の学びと実際に戦跡を巡った学びは全然違う。もっと勉強して、子どもたちにも丁寧に指導したい」と語った。中城中の與那覇あこ教諭(46)は「改めて教員という立場を自覚した。生徒たちにとって継続的な学びになるよう、頑張って伝えていきたい」と力を込めた。
(新垣若菜)