焦点インタビュー 外資系企業出身の新社長が見たオリオンビールの課題とは オリオンビール社長 早瀬京鋳氏


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 7月22日付でオリオンビールの代表取締役社長兼CEOに就いた早瀬京鋳(けいじゅ)氏(51)が9日、就任あいさつで琉球新報社を訪れた。野村ホールディングスと米投資ファンド、カーライル・グループの共同出資会社による株式公開買い付け(TOB)が成立し、新たな経営体制となったオリオンビール。これまで外資系企業でマーケティングを担ってきた早瀬氏に、社長就任後の始動状況や見えてきた課題、今後の計画などを聞いた。

 ―就任3週間でどういったことに取り組んだか。

 「8割方はあいさつ回りで、ビジネスパートナー含めて率直な意見をいただいている。応援の声が多いが、厳しい意見もあった。中には『昔は社員が現場によく足を運んでくれたが、最近は少ない』『大きな会社になり、あぐらをかいていないか』との苦言もあった。社員にもこうした声を伝え、オリオンが持つブランドのすごさ、沖縄の良さを出していこうと話している」

 「営業職員が1日の何割の時間を外回りに当てているか調べると、20~30%がいいところで残りは内勤していることが分かった。朝礼参加のための出社、日報の執筆に時間を取られている。必要性を検討し、自宅からの直行直帰を増やすなど外回りの時間を確保したい。事務的な部分では稟議(りんぎ)で印鑑を押す件数を少なくし、現場が決める部分を増やすなど、意思決定を早めることに取り組んだ」

 ―経営に外資系企業が参入したことへの警戒感は根強いが、どう考えるか。

 「外資系というとドライだというイメージがあると思う。確かにドライな面はあると思うが、それは言い換えるとお客さま第一だということだ。新入社員だとしても、客のことについて詳しければ社長に対してノーと言える。顧客中心で、会社の中の序列に忖度(そんたく)しない。私自身も外資系企業の中でそうした考え方で働いてきた。オリオンの社員にも客のためにいいことであれば何でもやってくれと伝えている。テレビCMにしてもマーケティングの結果を基に社員で決めてもらい、社長に見せる必要はない。客に近い人たちが判断する方が必然的に良い物になる。ドライとは現実的という点もある」

 ―中長期の経営計画策定の進展はどうか。

 「5年、10年先を見据えて現状の確認から始めている。自社の状況や県外のトレンド、世代や性別ごとの酒の飲み方、県内の人口動態、観光の状況などいろんな面を調べており、具体的なアイデアも出てきている。変えていけないのは『県内優先』という点だ。県内をおろそかにして県外で成功することはない。インバウンド客への対応も必要だが、県外、海外、観光客で潤うと安心してしまい、本丸が弱くなる。何か問題が生じると一気になくなってしまう部分でもある。県内重視という点は頑固にやりたい」

 ―5年後の新規株式公開(IPO)に向けた検討は進んでいるか。

 「今はそういうことよりも5年後、10年後のオリオンビールの企業価値をどう上げていくかを考えている。そこ(IPO)だけを考えても答えは出ないので、オリオンブランドをどう強くするかに集中している」

(聞き手・外間愛也)