オリオンビールやマーケティング会社の「刀」などが今帰仁村のオリオン嵐山ゴルフ倶楽部に計画するテーマパーク建設は、総事業費が500億~600億円規模となる見通しとなった。本部町の沖縄美ら海水族館の近隣に新たな観光拠点が完成することで、北部地域全体の経済振興につながることが期待される。一方で周辺道路の整備などクリアすべき課題も残る。
今回のテーマパーク建設は昨年7月に計画が明らかになった。北部地域では2014年から15年にかけて、米映画テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」(大阪府)の運営会社が施設建設を検討したが、断念した経緯がある。今回の事業に関わる「刀」の森岡毅CEOは当時、ユー・エス・ジェイ執行役員として沖縄でのUSJ計画に携わった当事者でもあった。
USJが主導した当時の構想と異なり、今回は地元企業が参画する枠組みが模索された。オリオンビールとリウボウ、ゆがふホールディングス、刀に近鉄グループホールディングスを加えた5社は昨年8月、共同出資による準備会社「ジャパンエンターテイメント」の設立を発表。テーマパーク開業に向け水面下で準備を進めてきた。
関係者によると、嵐山ゴルフ倶楽部でのテーマパーク整備計画について9月に正式な発表が予定されている。24年末から25年初めの開業を目標に、建設工事に入るまで今後2年程度はゴルフ場の運営を続けながら、会員権の買い取りや従業員の雇用対応などを進めると見られる。
テーマパークはゴルフ場のコースを活用するなど、北部の森林を生かした自然体験やキャンプなどが楽しめる施設を目指すという。恐竜をテーマにしたアトラクションの導入も視野に入れる。
本島北部は沖縄美ら海水族館に国内外から多くの観光客が訪れる一方で、周辺地域への誘客が課題となっている。新たなテーマパークの完成で北部の複数エリアを周遊する観光につなげることができ、名護市や本部町などの宿泊客が増加する可能性もある。
しかし建設予定地はアクセス道路が狭く、テーマパーク完成後に大型バスが多く通行すると、周辺環境へ悪影響を与えることも懸念される。オリオンなどは昨年7月、県に対し北部地区全体のインフラ整備などを求め、菅義偉官房長官ら官邸側にも事業への支援を要請している。計画の成功に向けて、北部振興や観光振興の目玉として行政側に協力を促す動きは今後さらに本格化しそうだ。
(平安太一)