翁長雄志は那覇市長時代、県知事選や国政選挙などさまざまな選挙で自民、公明両党の協力態勢の下で擁立された候補者を支えた。2006年11月の県知事選には前県商工会議所連合会会長(当時)の仲井真弘多が立候補した。「反自公」の枠組みから擁立された参院議員の糸数慶子らと対決した。雄志は選対本部長に就いた知事の稲嶺恵一や、自民党県連会長の西銘順志郎らと共に陣営を支えた。「稲嶺県政の継承発展」を訴えた仲井真は、糸数に約3万7千票差を付けて当選した。
08年に入ると11月の那覇市長選に向けた動きが活発化する。市議会与党や経済界は雄志の3選出馬に向けて準備を進めた。04年の市長選で高里鈴代を擁立し、約1万9千票の大差で敗れていた野党は、県議だった平良長政を擁立した。社民党県連、社大党、共産党県委、民主党県連を中心とした「反自公」の態勢構築を図った。
雄志は08年9月16日の市議会定例会で「協働のまちづくりをしっかりと完成させ、21世紀に向けたイデオロギーを抜いた、市民本位の市政を築くために3期目への出馬を決意している」と表明した。9月21日には記者会見で「風格ある県都・那覇を確固たるものにする最後の仕組みづくりに取り組みたい」と決意を述べた。会見には知事の仲井真、前知事の稲嶺恵一、自民党県連会長の具志孝助、公明党県本代表の糸洲朝則らが参加した。
後期高齢者医療制度や年金問題への批判など、自公政権に対する「逆風」の影響が懸念される中、雄志は選挙戦で2期8年の実績を強調した。08年6月の県議選で与野党逆転を果たした勢いに支えられ、市長選で「刷新」を訴える相手候補に対し、雄志は「相手はチェンジを掲げるが、組合主導の市政に戻してはいけない。『ノーリターン』を訴えていく」と述べている。
11月16日の投開票で雄志は7万票余を獲得し、平良を約1万5千票上回って当選した。16日夜、選対事務所で開票速報を見守った雄志は、複数の放送局が当選確実を報じると家族から花束を手渡された。支持者とカチャーシーで3選を喜び合った。
雄志は当選直後、報道各社に囲まれて「過去2回の選挙戦に比べても本当にうれしい。市民が那覇市の在り方をしっかり見詰めた結果だ。その負託に応えるようなまちづくりに取り組む」と強調。「3期目のベースは協働のまちづくり。人と人が支え合う仕組みを網の目のように広げていく。市民としっかり対話し、市民の心がどこにあるかを把握し取り組んでいきたい」などと述べた。
(敬称略)
(宮城隆尋)