沖縄が台風研究の最前線に 琉大研究者が直接観測継続 進路予報の精度高まりに期待


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琉球大学の山田広幸准教授、伊藤耕介准教授らが民間機で台風に突入し撮影した台風の目(提供)

 「台風銀座」と呼ばれる沖縄が、台風観測研究の最前線になりつつある。きっかけは2017年に琉球大学理学部の山田広幸准教授と伊藤耕介准教授が名古屋大学の坪木和久教授らと民間の小型ジェット機で台風に突入した研究だった。日本初、世界でもまれな民間機による台風の目の観測は大きな衝撃を与え、国際学会で「正気じゃない」と言われたほど。その後、台湾や米国などの研究者から注目を集めつつ、研究は継続、発展している。台風の進路や強さの予測にも生かせる取り組みで、県民にも恩恵を与えそうだ。

 気象庁が発表する台風の強さは、実は直接測っているわけではなく、衛星画像の雲のパターンから推測する「ドボラック法」が用いられている。米軍は直接観測しているが、1987年以降は西太平洋での観測をしていない。それ以降、気象庁と米軍の発表にぶれも生じており、西太平洋で発生した台風を直接観測する研究は貴重だった。

 伊藤氏や山田氏らはドロップゾンデという小型の観測機器を台風の目やその周辺に投入し、風向や風速、気温、気圧、湿度のデータを集めた。投入する高度は13・8キロで、米軍が行っていた観測より10キロ以上高く、より立体的に台風を捉えることができた。

 その結果、実測値と気象庁が「ドボラック法」を用いて発表した推定値との差が15ヘクトパスカルあることが分かった。また、台風の目の中に入ったことで、台風の目の中に竜巻を伴いながら立ち上がる渦があるなど、これまで詳細が分かっていなかった現象も記録した。いまだ謎が多い台風の姿が徐々に明らかになってきている。

 研究はPRAKIIの愛称で続けられており、2018年からはドロップゾンデから送信されるデータを衛星通信を介して気象庁を経由し、世界気象通信網(GTS)を使って世界中で共有できるようになった。

 研究は2020年度まで続けられる予定で、今後は台湾や米国などと共同で台風を直接観測することも計画している。

 伊藤氏や山田氏は「正確なデータを蓄積することで、台風の強さや進路予報の精度がより高まる」と研究の進展に期待。研究継続には航空機を飛ばすことが必須なだけに「台風の目に入りたいというお金持ちがいれば、一緒に入るんだけどな」と冗談ぽく語った。