病院への搬送2分→10分に 周辺開発で現ヘリポートの運用困難に 石垣市は海保基地に統合方針 周辺離島「一分一秒を争う」と反発


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
竹富町内4団体からの要請書を受け取る西大舛高旬町長(右端)=7月16日、町役場

 【八重山】石垣島周辺離島で発生した救急患者を乗せた海上保安庁のヘリコプターが着陸する、旧石垣空港跡地にある真栄里ヘリポートの継続利用が困難視されている。石垣市が計画する旧空港跡地開発の進展に伴い、ヘリの安定運用が難しくなると、ヘリポートを管理・運営する市が判断しているためだ。市は石垣空港の海保石垣航空基地に統合する方針を示すが、その場合、基幹病院・県立八重山病院への搬送時間が10分以上延びることになる。そのため周辺離島住民からは継続利用や隣接地への設置を求める声が上がる。

 市消防本部によると真栄里ヘリポートの利用件数は年間50件ほどで、竹富町と与那国町、多良間村で発生した急患を乗せたヘリが着陸する。着陸後、八重山病院までの搬送時間は1~2分ほどだ。

継続利用が困難視されている真栄里ヘリポート。左奥の建物が県立八重山病院

 一方で現在はさら地が広がる旧空港跡地では今後、市役所新庁舎建設をはじめとした周辺開発が計画されている。市は海保の意見も踏まえ、建設用クレーンなどが障害物となり、飛行の安全性確保が難しくなると判断。将来的に建物の高さ制限などヘリポート(場外離着陸場)の法的基準を満たさなくなるおそれも考慮し、3町村に対しヘリポートの航空基地への統合に理解を求めている。

 ただ、航空基地から八重山病院への搬送時間は15分程度になり、現状よりも大幅に時間を要することになる。急患搬送では重い症状の患者が運ばれることも多いため、「一分一秒を争う」として反発もある。特に急患輸送件数が最も多い竹富町民から統合に反対する声が出始めている。

 7月16日には竹富町公民館連絡協議会、町老人クラブ連合会、町婦人連合会、町青年団協議会がヘリポートの継続利用などを求め、竹富町に要請。要請書を受け取った西大舛高旬町長は、「今の場所からヘリポートを移すのはまかりならんと思っている」と強調した。

 町は市が旧空港跡地で整備予定の防災公園にヘリポートの設置を求める方針だが、市内部には同公園への常設のヘリポート設置は難しいとする意見があり、今後の行方は不透明だ。

 真栄里ヘリポートへの急患搬送が最も多い西表島西部の西表消防団長を務める山下義雄町議は「離島は診療所しかなく、(重い症状は)石垣島にある八重山病院に頼っている現状だ。同じ八重山の住民のためにも、病院近接地へのヘリポート設置に協力してほしい」と市に求めた。