【島人の目】休暇は命の潤滑油


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 ことしの日本の盆休みは9連休の事例もあったと聞く。また5月のゴールデンウイークは史上初の10連休になった。それを批判して「10連休は特権だ。休みの取れない人も多い。手放しで喜ぶな。貧者のことを思え」などとけんか腰で言い立てる論者もいた。だが、まず休める人から休む、という原則を基に休暇を設定し増やしていかないと「休む文化」「ゆとり優先の思考法」は社会に根付かない。

 バカンス大国ここイタリアの夏休み期間は6月に始まり9月まで続く。人々の多くはその間に平均2週間程度の休暇を取るが、それ以外の時節にも大小の連休を含む休みが多い。

 イタリア人は何かにつけて「できるだけ長く休む」ことを願う。休みという喜びに生きがいを見いだす。そんな態度を「怠け者」と言下に切り捨てて悦に入る日本人がいる。が、彼らはイタリア的な大らかさが持つ豊穣が理解できないのだ。あるいは生活の質と量を履き違えているだけの心の貧者だ。大いに休みのんびりしながらも、イタリアは国民の生活の質が高い一級の富裕国である。

 休暇は人の心身、特に「心」に大きな影響を与える重大事案だ。休暇の価値は働きづめの日々の中では見えてこない。休暇を取ることでのみ理解できる。

 人間は働くために生きているのではない。生きるために働くのだ。そして生きている限りは心豊かに過ごすべきであり、そのためには休暇は大いに必要なものだ。

 2019年に出現した日本の大型連休は、国の豊かさを示す重要なバロメーターだ。日本は今後ももっとさらに休みを増やしていく取り組みを続けるべき、と腹から思う。

 (仲宗根雅則、イタリア在、TVディレクター)