伝統空手を文化遺産に(1) 東恩納盛男氏(国際沖縄剛柔流空手道連盟最高師範)〈上〉 空手界と県民一体で


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一般社団法人沖縄伝統空手ユネスコ登録委員会の東恩納盛男理事長(中央)ら役員=10日、那覇市の県庁記者クラブ

 沖縄伝統空手の国連教育科学文化機関(ユネスコ)無形文化遺産登録を目指す一般社団法人沖縄伝統空手ユネスコ登録委員会がこのほど設立された。委員会は沖縄伝統空手を「武道」としてではなく「社会的慣習、儀式および祭礼行事」として登録を目指す方針だ。文化遺産登録の意義や「儀式」として登録を目指す理由について、関係者に語ってもらった。1回目は登録委員会の東恩納盛男理事長(国際沖縄剛柔流空手道連盟最高師範)。

 この小さな島で生まれた伝統空手は全世界に広がりを持っている。世界の空手愛好者は空手発祥の地・沖縄に注目している。ユネスコ無形文化遺産として登録することで、沖縄への注目度はいっそう高まるだろう。沖縄の活性化にもつながるはずだ。実現には沖縄の空手界と県民が一体となった取り組みが不可欠だ。

■4流派合同で演武

 登録実現に向け、沖縄伝統空手ユネスコ登録委員会を新たにつくった。空手界にはさまざまな団体・組織があるが、ユネスコ登録を目指すのは、あくまでも沖縄の伝統空手だ。登録委員会を設けた伝統空手の4流派―小林流、少林流、剛柔流、上地流―を中心に、県と連携しながら活動したい。

 昨年10月、ユネスコ無形文化遺産登録の機運づくりのため4流派が初めて集結する「沖縄伝統空手演武大会」を開いた。今年5月にも4流派合同による「沖縄伝統空手儀式」を開催した。私たちの国際沖縄剛柔流空手道連盟も「沖縄伝統空手儀式」を開催した。今後は「空手の日」(10月25日)にも演武を予定している。このような取り組みを通じてユネスコ登録の意義を県民に伝えていきたい。

■1本の電話

 伝統空手のユネスコ無形遺産登録へ向けた動きは2010年ごろからあった。私たちの目指す取り組みは、16年に日本空手協会前会長の中原伸之さん(元日銀審議委)から電話をいただいたことがきっかけとなった。「戦争で沖縄の人々を犠牲にしてしまった。そのことを申し訳なく思っている。沖縄のために、伝統空手のユネスコ世界無形文化遺産登録を目指したい」というお話だった。

 中原さんの提案を受け、伝統空手4流派の資料を送った。さらに中原さんを通じて、元ユネスコ事務局長の松浦晃一郎さんからも貴重な助言をいただいた。

 以後、4流派で勉強会を重ねてきた。17年12月のシンポジウム「空手はどこから来たか」では「伝統空手の正しい継承を図り、未来へ大きく発展させていくためにユネスコ文化遺産に登録しよう」と提言した。