“青春の入口”の面白さ感じて 映画「カツベン!」の周防監督 描かれる日本映画の第一歩とは…


社会
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最新作映画「カツベン!」PRのため琉球新報社を訪れた周防正行監督=那覇市の琉球新報社

 「Shall we ダンス?」など数々の名作を生み出した周防正行監督最新作映画「カツベン!」が12月13日に公開される。活動写真(無声映画)時代に映画の内容を解説して観客に伝えた「活動弁士」を描いた理由を語った前回に続き、初のデジタル撮影の感想や映画の意義を聞いた。(聞き手 藤村謙吾)

―映画はデジタル技術で撮影されている。

 「監督になって初めて全編デジタル撮影をした。今までフィルム撮影だったのにどうして活動写真をテーマに映画を撮るときに、デジタル撮影なのかと、引き裂かれる思いがあった。劇中で使われるサイレント映画はオリジナルで全て撮り直しており、その何本かは35ミリモノクロフィルムを用いて、サイレント映画の撮り方でやった。今回のスタッフはフィルムで育った人間なので喜んで撮影していた」

―デジタル撮影に取り組んだ感想は。

 「時代劇に関しては、デジタル撮影は必要条件だと思った。(『カツベン!』で言うならば)世の中、大正時代になかったものばかりで、編集作業で映ってしまったものを消さなければいけない。黒澤さんの時代だったら『あの家が邪魔だから壊せ』と言ったかもしれないが、今は簡単に消せる。フィルムで撮ろうと思うと舞台を造るだけでも大変。フィルム撮影の困難さは今回嫌というほど知ったし、技術革新でいろいろ変わっていくと分かった」

―今の時代になぜこの映画を送りだすのか。

 「大正時代は大正ロマンなどと言われるように明るく、自由闊達(かったつ)な雰囲気がまだあった。同時期に世界で作られた活動写真にも、『今なんでそんなことが起きるのか』みたいな展開があった。当時の活動写真の持つ面白さを映画全体に感じさせたかった。そのため、大正時代はどんな風に映画が見られたのか、史実をなるべく守り制作した」

 「日本映画の幼年時代というか、青春の入り口くらいの感じを大事にしたかった。当時映画はまだまだ新しい産業で、最先端のエンターテインメントだったので、若者が多く入った。映画監督も年を取っているのは40代の牧野省三さんくらいで、みんな20代くらい。そういう若々しい産業のエネルギッシュなところを感じてもらえたらと思う。牧野さんがモデルの監督と、『目玉の松ちゃん』(尾上松之助)がモデルの役者が出てくる。2人は日本映画で最初の役者と監督のスターだ。日本映画の第一歩を見てもらいたい」