芸能・文化

『那覇・末吉公園を歩く 楽しい植物ウォッチング』実用性に富んだ図鑑

『那覇・末吉公園を歩く 楽しい植物ウォッチング』身近な植物をみる会編著 ボーダーインク・1944円

 自然好きにとって、図鑑は座右の書だ。僕も小さなころから、本棚には図鑑が収まっているのが常だった。ところで、図鑑というのは、なかなか悩ましい問題を抱えている。なにしろ、自然界は多様性の宝庫である。そのため、すべてを網羅しようとすると、とてつもない分量の情報を納めなければならなくなるのだ。かくして、僕が所持している、日本産全種が載っているという魚の図鑑は、持つのさえ難儀なほど分厚く重たいものになっている。だから、網羅に加えて「限定」という要素を取り入れた図鑑もある。今回出版された図鑑も、末吉公園に限定した植物図鑑であるがゆえに、コンパクトであり、かつ実用性に富んでいるという利点を持っている。

 末吉公園は、那覇の街中のまとまった緑地としてはピカ一といっていい場所だ。僕も、虫を探しにしばしば足を運ぶが、こんな街中にあるのに、と思うような出会いがあったりする。沖縄に移住してはや、19年。その間、いったい何度、末吉公園を訪れたか数え上げることはできない。ところが、それほど足を運んでいるのにもかかわらず、この図鑑を見て、ようやく名前が分かった植物がいくつかある。その一つがウロコマリ。なんだかありふれた雑草のようだけど、名前が分からない。そこで手持ちの植物図鑑を見たけれど、結局、正体不明のままだったものだ。これはうれしい。

 また、「公園」といった場所は、植栽されている植物が多く、そうしたものは一般の植物図鑑には掲載されていないものも多い。だから野生植物も、植栽された植物も併せて紹介されているこの植物図鑑はありがたい。巻末近くの写真入りの植物紹介は、アイウエオ順なので、目指す植物を引き当てるのは、最初は難しいかもしれないが、何度も見返すうちに、きっと「ああ、これか」と分かるはずだ。

 さて、この図鑑には、僕が末吉公園で存在も認識できていなかった植物も紹介されていた。それがヤマゴボウノキ。どんな木か、みなさんもこの本を片手に探してみませんか。

 (盛口満・沖縄大学学長)

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 身近な植物をみる会 植物好きの同好会で沖縄生物学会会員や小学校、高校の元教諭で構成する。一般の人々に向け自然保護と保全活動を行い、末吉公園では2004年ごろから本格的な植物情報の調査を始めた。

 

身近な植物をみる会 編
四六判 180頁(オールカラー)

¥1,800(税抜き)
 








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