社会

離島民の「命綱」守る 診療所に代替看護師「しまナース」 不在時にカバー

在庫を確認するしまナースの加島博美さん(左)と渡名喜診療所の伊波えみ子さん=4月、渡名喜村

 昔ながらの赤瓦屋根の住宅をフクギの木が囲む。立ち並ぶ木々が日差しを遮るせいか、心なしか過ごしやすい。「夜になってライトアップされると、また違う雰囲気で良いですよ」。4月、渡名喜村で白砂が敷き詰められた小道を歩きながら、看護師の加島博美さんが教えてくれた。「しまナース」2年目の加島さんが、代替看護師派遣で村を訪れるのは4回目だという。

 広い海域に160の島々が点在する沖縄県。県によると2018年1月現在、沖縄本島と橋などで結ばれている島を除くと、有人離島は37に上る。16の県立診療所では通常の看護業務だけでなく、地域住民の健康増進のための保健活動も担う。医師や看護師は、土日祝日であっても地域を離れるのが難しい。診療所の看護師が法事や研修などで島から離れる際には、代替の「しまナース」が訪れてカバーする。

 「次の診察は来月ですね。お大事に」。渡名喜診療所の看護師伊波えみ子さんが女性を送り出す。患者が途切れると、加島さんと処方された薬の確認や在庫管理を始めた。伊波さんは4月に着任。県立八重山病院での勤務経験はあるが、内科が長く診療所で働くのには不安があったという。「加島さんが来てくれると心強い」と笑顔を見せつつ「みんなが平等に医療を受けられるよう、私たちがしっかりしなくてはと思う」。

 渡名喜村に来て2年目の白水雅彦医師(30)は「大きい病院では見えなかった患者の生活が、島ではよく見える。勉強になる」と離島勤務の魅力を語る。しまナースについては「看護師が離れると医師1人でやらなくてはいけないことが増える。いろんな島を知る看護師が来てくれるのはとてもありがたい」と話す。

 地域密着の診療所は、島民の信頼も厚い。渡名喜村の介護職員の比嘉幸枝さん(57)は昨年夏、突然体調が悪くなって嘔吐(おうと)した後、意識を失ったことがあった。診療所で受診しヘリで沖縄本島に搬送された。一過性全健忘症と診断され、大事には至らなかったが「いざという時に対応できるのも診療所があるからこそ」と力説する。

 しまナースは移動距離が長く、体力も求められる。悪天候で交通手段がなく、予定変更を余儀なくされることもしばしば。「10日の派遣予定が14日になったこともある」と苦笑いする加島さん。「各診療所を知っているのがしまナースの強み。それぞれの良い点を伝えていきたい」。島民の命綱とも言える診療所をサポートしていく。

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 離島にある県立診療所の看護師の勤務環境を改善しようと、県が実施する代替看護師派遣事業。1人体制の診療所看護師が、研修や法事などで島を離れる際に派遣され、業務をカバーしている。離島医療を支える「しまナース」の活動を紹介する。
 (前森智香子)